コラム

辻原 登「2018 この3冊」|三浦雅士『孤独の発明 または言語の政治学』(講談社)、朝井まかて『悪玉伝』(角川書店)、倉数茂『名もなき王国』(ポプラ社)

  • 2019/01/07

2018 この3冊

(1)『孤独の発明 または言語の政治学』三浦雅士著(講談社)

(2)『悪玉伝』朝井まかて著(角川書店)

(3)『名もなき王国』倉数茂著(ポプラ社)



(1)『孤独の発明 または言語の政治学』は、言語の考察で、これほど遠くまで、しかもいささかの晦渋(かいじゅう)さもなく連れ出してくれる本は稀(ま)れである。刺激度は、ジュリアン・ジェインズの『神々の沈黙』やアーサー・O・ラブジョイの『存在の大いなる連鎖』を読んで以来だ。

とりわけ第六章「光のスイッチ」では目が啓(ひら)き、世界を初めて見る思いがした。

(2)『悪玉伝』は、進境著しい朝井まかて。銀(本位制)の大坂と金(本位制)の江戸との闘い。悪党でなく、悪玉と呼ばれる男はどんな奴(やつ)か。興味を繋(つな)いで読み進むうち、作者得意の牢獄(ろうごく)描写。うならされた。ラストにやや物足りなさが残るが‥‥‥。

(3)『名もなき王国』は、新鋭の作品だが、深い思索とリリシズムがタペストリーの裏 地のように沈められた、エンタテーメントの秀作。

孤独の発明 または言語の政治学 / 三浦 雅士
孤独の発明 または言語の政治学
  • 著者:三浦 雅士
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(554ページ)
  • 発売日:2018-06-30
  • ISBN-10:4062208806
  • ISBN-13:978-4062208802
内容紹介:
人間の言語能力をめぐる先端科学の画期的転回から日本人の美意識を貫く天台思想まで――人間存在の根源を問い直す刺激に満ちた論考。

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悪玉伝 / 朝井 まかて
悪玉伝
  • 著者:朝井 まかて
  • 出版社:KADOKAWA
  • 装丁:単行本(328ページ)
  • 発売日:2018-07-27
  • ISBN-10:404106919X
  • ISBN-13:978-4041069196
内容紹介:
江戸時代最大の贈収賄事件の行く末は? 歴史エンタメの最高峰。

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名もなき王国 / 倉数 茂
名もなき王国
  • 著者:倉数 茂
  • 出版社:ポプラ社
  • 装丁:単行本(477ページ)
  • 発売日:2018-08-03
  • ISBN-10:4591159302
  • ISBN-13:978-4591159309
内容紹介:
三人の小説家は、語り、騙る――。謎が明かされるラスト8ページで、世界は一変する。深い感動が胸を打つ、至高の“愛”の物語。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2018年12月16日

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