本文抜粋

『子育て算数レシピ 赤ちゃんから小学生まで! 算数に役立つ働きかけ36』(論創社)

  • 2020/01/29
子育て算数レシピ 赤ちゃんから小学生まで!  算数に役立つ働きかけ36 / 田中 真紀
子育て算数レシピ 赤ちゃんから小学生まで! 算数に役立つ働きかけ36
  • 著者:田中 真紀
  • 出版社:論創社
  • 装丁:単行本(120ページ)
  • 発売日:2020-01-09
  • ISBN-10:4846018431
  • ISBN-13:978-4846018436
内容紹介:
「働きかけ」は「言葉がけ」。家庭でのどんなシーンも学びの場・学びの時間に変えられる。タナカマキ式「算数下準備」!1項目1見開きで楽しく紹介。わかりやすいイラスト満載。
著者の田中真紀さんは、発達障害の長男の子育てに悩むなか、「なんとか脳を発達させよう」「できるだけ多くの刺激を与えよう」と、この「算数の働きかけ」を考え出して実践。
長男は有名私立中高一貫校から国立の大学・大学院に進みました。田中さんは、「働きかけ」は子育ての延長で、勉強とは違うといい、「のんびり」「楽しく」「こまめに」「くり返し」が大切だと語ります。算数ができないことで、子どもたちの自己肯定感が損なわれないように、また子育てに悩むママたちに、このオリジナルの働きかけが役立つように、という願いから本書が誕生。本文とコラムの一部を抜粋して紹介します。なお、本書では、わかりやすいよう、説明イラストがたくさん入っています。

九九も逆からの九九も 〜掛け算の前に〜

九九は覚える

その意味は後でわかるので、とりあえず九九を言えるようにする。
これはいつからでも構いません。0 歳からやれば一番いいですよね。初めは聞かせるだけです。子どもが言えなくたっていいのです。繰り返し聞かせます。

●抱っこひもで胸のところにいる子どもの頭の上から九九を言う。
●お買いものに行く道々に九九を言う。
●幼稚園に行く道々に九九を言う。
●お風呂の中で九九を言う。

必ず、2 の段から始めましょう。聞いているうちに子どもは一緒に言うようになります。
初めは聞かせる。無理に言わせない。ひとりで言えたら「すごくほめる」。
これがすべての働きかけの基本です。

そして、これもスピードが目安です。
すらすら言えるようになるまで何回もやりましょう。

「逆からの九九」もやってみる

これはなかなかスラスラとはいかないですが、学校で求められてはいないので、できないからとあせったり、無理にやる必要はありません。頭の体操だと思ってやるといいでしょう。

全部で何個か調べる時に、九九を使ってみます。

『毎日2 個キウイを食べるとして、1 週間分で何個買えばいい?』
と、質問し、考えさせましょう。
『2 × 7 = 14、にしちじゅうし、だね』と、九九で言いましょう。

九九を使っての合計を知ったら、紙に掛け算の式を書いて見せることもしましょう。

ここが大事

→働きかけに適正年齢はありません。
0 歳でも、1 歳でも、九九を聞かせていれば、しゃべるようになった時に九九をすらすら言うでしょう。
覚えておいてのちに役に立つことは、早くから耳に入れておきましょう。
「門前の小僧習わぬ経を読む」と同じです。
「意味がわからず言えても仕方ないのではないか」という意見がありますが、そのうちに必ず学校で習うので、その時に意味がわかるので大丈夫です。聞いたことがある、知ってる、という余裕があると授業が楽しくなります。

→早期教育は悪いこと?
「早期教育を受けた子どもは、授業をばかにしてしまい、授業態度が悪くなるのではないか」
これは、早期教育そのものに問題があるのではなくて、早期教育を行う人の考え方、“躾(しつ)け”に問題がある場合だと思います。
早期教育は、ほかの子よりできるようにして自慢するためではなく、子どもの脳力をより発達させ、知識を増やし、人生を豊かにするためだと私は思っています。

働きかけの成果はある日突然やってくる

働きかけは繰り返しが大切です。何回かやったくらいでわかるわけがない、と思っておくくらいがいいです。

理解したかどうかにこだわってしまうと、ついがっかりしてしまい、それが重なるとイライラが募って楽しくなくなってしまいます。
なかには、働きかけを少ししただけで、「うちの子はできないんです」なんて、子どもの能力を見限った発言が出てしまう方もいます。

なので、私は、「きっとわからないだろう」と思えるような、「ずっと先の学年の内容の働きかけ」をしちゃえばいいと思っています。たとえば、3 歳の子に分数を教えるような。そうすると、わからなくて当然と思えて、気長に構えられます。

また、子どもは思いのほかできる時があります。
ちょっと難しいかなと思った働きかけをしたのに、すぐ理解し、「あら、これがすんなりわかるの?」とびっくりすることがあるのです。
そういう時は、子どもの可能性に感動します。
難しいと思ったけど試しにやってみてよかったと思うのです。

「働きかけに適正年齢はありません」
と、いつも私が言うのは、こういうわけもあるのです。

とはいえ、毎日いろいろと働きかけをし、また、何回も同じことを話して、見せて、もうわかっただろうと思ってもわかっていない、ということがあるとやはり、「まだか……」と、ため息の出る思いをしてしまいます。うちの子はほとんどいつもそんな感じでした。
しかし、何年後かには、必ず、その成果が出る日がきます。
どうか、年単位で期待してください。

こんなことがありました。
2分の1(本書では分数表記、以下同じ)については、私は息子が3 歳くらいからか、とにかく、小さい時から何回も何回も、絵に描いたり、物を見せたりしながら教えていましたが、実際には全然わかっていないな、と思っていました。
息子が6 歳を過ぎたある夜、晩ご飯のおかずを食卓に並べ、私はまだ台所で何かしていた時です。
食卓に座って「いただきます」を待っていた息子から、「ママ! ママ!」と、私を呼ぶ声がしました。
息子のところに行ってみると、息子は自分の前に置かれた皿を指さし、
「これが、にぶんのいちでしょ?」と言うのです。
見ると、息子のハンバーグはきれいに半分に切られていました。

息子は自分のハンバーグをナイフで半分に切り、その片方を指さして、「にぶんのいち」と言っているのです。

これは、3 年かかって、息子が2分の1を自分のものにした瞬間でした。
ついに、本当に2分の1がわかったのです。
私は胸が熱くなりました。
この時のことは今でも忘れないし、頑張ってきた私へのご褒美(ほうび)のような出来事でした。

[書き手]田中真紀(たなか・まき)(著者)
子育て算数レシピ 赤ちゃんから小学生まで!  算数に役立つ働きかけ36 / 田中 真紀
子育て算数レシピ 赤ちゃんから小学生まで! 算数に役立つ働きかけ36
  • 著者:田中 真紀
  • 出版社:論創社
  • 装丁:単行本(120ページ)
  • 発売日:2020-01-09
  • ISBN-10:4846018431
  • ISBN-13:978-4846018436
内容紹介:
「働きかけ」は「言葉がけ」。家庭でのどんなシーンも学びの場・学びの時間に変えられる。タナカマキ式「算数下準備」!1項目1見開きで楽しく紹介。わかりやすいイラスト満載。

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