本文抜粋

『歌謡曲が輝いていた時 昭和の作曲家20人100曲』(論創社)

  • 2020/02/28
歌謡曲が輝いていた時 昭和の作曲家20人100曲 / 塩澤 実信
歌謡曲が輝いていた時 昭和の作曲家20人100曲
  • 著者:塩澤 実信
  • 出版社:論創社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(336ページ)
  • 発売日:2020-02-13
  • ISBN-10:4846019136
  • ISBN-13:978-4846019136
内容紹介:
「悲しい酒」「青い山脈」「イヨマンテの夜」「お富さん」「人生いろいろ」「いつでも夢を」「恋の季節」「黒い花びら」「みだれ髪」「北国の春」「大阪しぐれ」「小指の想い出」「わたしの城… もっと読む
「悲しい酒」「青い山脈」「イヨマンテの夜」「お富さん」「人生いろいろ」「いつでも夢を」「恋の季節」「黒い花びら」「みだれ髪」「北国の春」「大阪しぐれ」「小指の想い出」「わたしの城下町」「港町ブルース」「喝采」「ブルー・ライト・ヨコハマ」「みずいろの手紙」「雨の慕情」「天城越え」「UFO」…古賀政男、服部良一、遠藤実、船村徹ほか作曲家20人の代表作5曲をセレクト。
歌謡曲が輝いていた時 昭和の作詞家20人100曲 / 塩澤実信
歌謡曲が輝いていた時 昭和の作詞家20人100曲
  • 著者:塩澤実信
  • 出版社:論創社
  • 装丁:単行本(336ページ)
  • 発売日:2020-02-13
  • ISBN-10:4846019128
  • ISBN-13:978-4846019129

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

古賀政男、服部良一、遠藤実、船村徹……昭和の代表的な作曲家20人に焦点を当てて、各代表作5曲を紹介する『歌謡曲が輝いていた時 昭和の作曲家20人100曲』が刊行された。
本記事では本文から一部抜粋し、美空ひばり「悲しい酒」の作曲家・古賀政男、淡谷のり子「別れのブルース」の作曲家・服部良一を紹介する。
※本書と同時に『昭和の作詞家20人100曲』も刊行。 

元日本レコード大賞審査委員が、昭和の歌を時代の香り豊かに紹介

和風の古賀メロディーの時代

流行歌に作曲家がメロディーを付け始めたのは、レコード産業が成立してからである。

日本では、昭和の時代と歩みをともにするが、まず作曲家の一番星になったのが中山晋平だった。

中山晋平の曲が、民謡的な匂いのただよう素朴感のあるメロディーだったのに対し、古賀メロディーは、都会的な哀愁感が嫋々(じょうじょう)と流れ、そのやるせないひびきが大不況下の暗い世相に共鳴して、狂乱に近い大ヒットになったのである。

古賀政男は、マンドリンの演奏からギターに転じ、独学で作曲を志していた。「影を慕いて」と同時期に、「酒は涙か溜息か」を作曲しているが、短い二行詞にどう曲を付ければいいか一ヶ月余苦しみ抜いた末に、古賀メロディーの原点となる、やるせない哀愁に彩られた曲調を編み出したのである。

演歌の大御所・古賀政男は、昭和期を代表する作曲家である。七十三年の生涯に、五〇〇〇曲ともいわれる古賀メロディーを生み出して、戦前・戦後を通じヒット曲の多さでは、断然、他を圧している。 

概して、流行歌の賞味期限は短いものだが、古賀メロディーは三十年、五十年と歌いつづけられるエバーグリーン曲が多いのだ。

「酒は泪か溜息か」「影を慕いて」「サーカスの唄」「東京ラプソディ」「人生の並木路」「誰か故郷を想わざる」「なつかしの歌声」「悲しき竹笛」「湯の町エレジー」「トンコ節」「無法松の一生」「東京五輪音頭」「柔」「悲しい酒」……ヒット曲の十数曲を並べただけでも、古賀メロディーの魅力をよみがえらすことができるだろう。

「悲しい酒」は、作詞家・石本美由起が、「酒は泪か溜息か」の現代版を作るよう要求され、さんざん苦しんだあげく、二行詞で六コーラスの詞を書いたところ、古賀は作曲にあたって一番と二番をひとつにし、四行詞の形にして苦渋の末に曲を付けたものだった。

美空ひばりは、この曲を〝絶唱〟といってもいい歌唱力で涙を流して歌いあげ、晩期を象徴する歌に仕上げた。


服部良一の登場と戦後花開いたメロディー


昭和時代に古賀メロディーに比肩する作曲家は服部良一だった。

服部は、「別れのブルース」「湖畔の宿」「蘇州夜曲」「青い山脈」と、昭和歌謡史に燦然と輝く名曲の数々を誕生させている。

日本の流行歌は、服部メロディーの登場によって、古賀メロディーの日本系に対比する、外国系のメロディーの流れを、日本に誘導する契機を作ったのである。

メロディーに国境はなかった。

海外でヒットした歌の詞は日本語に訳さないことには、日本人に通じなかったが、曲はアメリカのジャズ、ロカビリー、ハワイアン、ウェスタン。ラテン音楽のマンボ、タンゴ。フランスのシャンソンであろうと、聴いて情感に訴えるものがあり、素敵なメロディー、リズムと感じたら、即刻に受け入れられた。

海外のヒット曲は、ストレートに日本に入って来て大流行して不思議はなかった。

服部良一の才能は、戦後ジャズ、ブキ・ウギのリズムの解放によって、一気に花開いた感があった。

戦時中は敵性音楽として、ジャズは排撃を受け、服部メロディーは、「いかにも脆弱、女々しく感じられ、唾棄すべき弱さであり、あまりに感傷的過ぎる」という理由でたびたび発禁になり「発禁メロディー」と揶揄(やゆ)されていた。

それが一転、解放のメロディーになったのである。まず、笠置シヅ子が舞台狭しと踊り歌う「東京ブギウギ」が、心ずきずき、わくわくさせて大ヒット。

作詞は禅の権威・鈴木大拙と、アメリカ女性が結ばれて生まれたハーフの鈴木勝が、奔放な詞を書き、服部が曲を付け、OSK(大阪松竹歌劇団)出身の笠置シヅ子が、強烈な黒人のひびきを発散させてダイナミックに歌いあげた。

笠置の歌はインテリから夜の女に及ぶまで圧倒的に受けた。そして、彼女はたちまち〝ブギの女王〟にたてまつられた。

[書き手] 塩澤実信(しおざわ・みのぶ)
1930(昭和5)年、長野県生まれ。双葉社取締役編集局長をへて、東京大学新聞研究所講師等を歴任。日本ペンクラブ名誉会員。元日本レコード大賞審査員。著書多数。

歌謡曲が輝いていた時 昭和の作詞家20人100曲 / 塩澤実信
歌謡曲が輝いていた時 昭和の作詞家20人100曲
  • 著者:塩澤実信
  • 出版社:論創社
  • 装丁:単行本(336ページ)
  • 発売日:2020-02-13
  • ISBN-10:4846019128
  • ISBN-13:978-4846019129

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歌謡曲が輝いていた時 昭和の作曲家20人100曲 / 塩澤 実信
歌謡曲が輝いていた時 昭和の作曲家20人100曲
  • 著者:塩澤 実信
  • 出版社:論創社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(336ページ)
  • 発売日:2020-02-13
  • ISBN-10:4846019136
  • ISBN-13:978-4846019136
内容紹介:
「悲しい酒」「青い山脈」「イヨマンテの夜」「お富さん」「人生いろいろ」「いつでも夢を」「恋の季節」「黒い花びら」「みだれ髪」「北国の春」「大阪しぐれ」「小指の想い出」「わたしの城… もっと読む
「悲しい酒」「青い山脈」「イヨマンテの夜」「お富さん」「人生いろいろ」「いつでも夢を」「恋の季節」「黒い花びら」「みだれ髪」「北国の春」「大阪しぐれ」「小指の想い出」「わたしの城下町」「港町ブルース」「喝采」「ブルー・ライト・ヨコハマ」「みずいろの手紙」「雨の慕情」「天城越え」「UFO」…古賀政男、服部良一、遠藤実、船村徹ほか作曲家20人の代表作5曲をセレクト。

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