1『信仰』(文藝春秋)
固定観念“ふつう教”に抗する何が正義で何が不正か、何が正気で何が狂気か。村田沙耶香はそれらを絶えず反転させながら、生(性)老病死のタブーに切りこんできた。その小説を読む者は、つねに意識を揺さぶられ、自…
固定観念“ふつう教”に抗する何が正義で何が不正か、何が正気で何が狂気か。村田沙耶香はそれらを絶えず反転させながら、生(性)老病死のタブーに切りこんできた。その小説を読む者は、つねに意識を揺さぶられ、自…
恋愛・セックス・結婚は、なぜ人生で重要とされるのか──。レバノン人哲学者ラジャ・ハルワニの著書『愛・セックス・結婚の哲学』の日本語版がこのたび刊行されました。日本ではあまり取り上げられることのないトピ…
たまげた。九月に発売された文芸誌「文學界」「新潮」「群像」の十月号が軒並み好調な売れ行きを示したんだそうな。朝日新聞十月六日夕刊に掲載された記事によれば、〈文芸誌の発行部数は約1万部。少部数ではあるが…
実証実験を繰り返してきた祖先文字記録のない先史を人類史としてとらえ直す著作が出版界で快進撃を続けている。歴史学者Y・N・ハラリ『サピエンス全史』や進化心理学者S・ピンカー『暴力の人類史』、進化生物学者J…
ころさない、ころされたくない「ガザ地区北部で続くイスラエル軍の攻撃」という写真が、新聞に載っていた。土砂降りのように降る爆弾を見て「なにこれ?」と息子が言う。「戦争だよ。国と国が、たたかってるの」「…
社会問題の虚偽、がんがん暴きます著者はイタリアの花売り娘を母として生まれ、今は幕張に住み、立ち食いそばのバイトと大学講師をしています。姓もなんだか嘘(うそ)くさい感じがします。 ところが本書は、社会…
英米文学では「語り直し」ブームが続いている。名作を土台に語り手や舞台設定を替えて新たな物語を紡ぎだすという手法だ。多くは女性や弱者の視点で語り直される。なかでも題材になることが多いのは、シェイクスピ…
おしゃべりで行動的な「絶滅」の物語アメリカの小説家ハーマン・メルヴィルの代表作『白鯨』は、冒険小説でありながら、鯨にまつわる文章が満載だ。鯨の語源、図鑑的な記述、捕鯨による影響など、あらゆる鯨情報が…
『梁塵秘抄』――この素敵な本は、題で随分ソンをしているように思う。たまに持って歩いていると、若い友人たちから不思議そうな目で見られる。「わっ、さすが、モト古典の先生!」「なにそれ、宗教関係の本?」もの…
独裁者ビロウの精神世界を具現化させた〈理想形態市(ウェルビルトシティ)〉を首都とする東の帝国。科学と魔法双方に長じた天才ビロウは〈クリスタルやピンクの珊瑚、尖塔(せんとう)、蔦(つた)の絡まる格子垣…