解説

『みだれ髪』(新潮社)

  • 2018/01/05
みだれ髪  / 与謝野 晶子
みだれ髪
  • 著者:与謝野 晶子
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(254ページ)
  • 発売日:1999-12-27
  • ISBN-10:4101170215
  • ISBN-13:978-4101170213
内容紹介:
「その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな」「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」。凛然と、誇らかな情熱をもって、命がけの恋心を、今この時の自身… もっと読む
「その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな」「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」。凛然と、誇らかな情熱をもって、命がけの恋心を、今この時の自身の美しさを歌いあげた『みだれ髪』。1901(明治34)年、その運命の人与謝野鉄幹により発刊。大人は眉を顰め、青年は快哉を叫んだ―まさに20世紀を拓いた全399首を、清新な「訳と鑑賞」、評伝と共に贈る。

商家の娘の烈しい自己肯定は時代原理への無意識の挑戦

歌集『みだれ髪』を発表した1901(明治34)年、与謝野晶子はまだ満22歳だった。

その子二十櫛(はたちくし)にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな

それは士族の娘の歌ではなかった。商家の娘の、誇り高い自己肯定の声だった。

男性文学者が自分の「内面」の醜怪さを凝視しようとしていたまさにそのとき、彼女は外見の美と恋愛感情の高揚感を直截(ちょくせつ)に、かつ巧みに歌いあげた。人々は晶子の大胆さに虚を衝(つ)かれ、晶子の率直さに、むしろ恐れを感じた。

泉州堺に生い立った彼女は、江戸中期の町人文化の再発見を行ったともいえるのだが、それは結果として、「男性」性が支配した明治という時代に対する痛烈な批評となった。奇(く)しくも20世紀最初の夏の出来事であった。

内容解説

「その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな」「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」

誇らかに命がけの恋心と、今この時の自身の美しさを歌いあげた『みだれ髪』は、その恋の相手、与謝野鉄幹が刊行した。大人は眉を顰(ひそ)め、青年は快哉を叫んだ。まさに20世紀を拓いた全399首の歌集に、清新な「訳と鑑賞」、評伝を付加する。

【この解説が収録されている書籍】
新潮文庫20世紀の100冊  / 関川 夏央
新潮文庫20世紀の100冊
  • 著者:関川 夏央
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:新書(213ページ)
  • 発売日:2009-04-00
  • ISBN-10:4106103095
  • ISBN-13:978-4106103094
内容紹介:
文学作品は、時代から独立して存在しているわけではない。その作品が書かれ、受け入れられ、生き残ってきたことには理由がある。与謝野晶子、夏目漱石、森鴎外などの古典から、谷崎潤一郎、三島由紀夫などの昭和の文豪、現代の村上春樹、宮部みゆきまで、1年1冊、合計100冊の「20世紀の名著」を厳選。希代の本読み、関川夏央による最強のブックガイド。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

みだれ髪  / 与謝野 晶子
みだれ髪
  • 著者:与謝野 晶子
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(254ページ)
  • 発売日:1999-12-27
  • ISBN-10:4101170215
  • ISBN-13:978-4101170213
内容紹介:
「その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな」「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」。凛然と、誇らかな情熱をもって、命がけの恋心を、今この時の自身… もっと読む
「その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな」「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」。凛然と、誇らかな情熱をもって、命がけの恋心を、今この時の自身の美しさを歌いあげた『みだれ髪』。1901(明治34)年、その運命の人与謝野鉄幹により発刊。大人は眉を顰め、青年は快哉を叫んだ―まさに20世紀を拓いた全399首を、清新な「訳と鑑賞」、評伝と共に贈る。

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