チステルニーノ──ローカル線の駅で降り、オリーブの樹やトゥルッリの建物が点在するのどかな田園風景を楽しみながら、坂道を上っていくと、丘の上に白い家々が見えてくる。徐々に空間の密度が上がり、やがて旧市街の迫力ある外観が目の前に現れる。イタリアの中世都市へのアプローチは、このようにいつもダイナミックだ。ポルタ・グランデ(大きな門)という城門をくぐり、この町の旧市街に一歩踏み込んだ時の衝撃を、私は今も忘れない。まるで、雪で築き上げられた大きな迷宮の世界に彷徨い込んだ感じだった。道は狭くて曲がりくねっている。両側の建物の壁は歪み、すべて石灰で真っ白に塗られている。道幅は狭いのに、建物は何層にも重なっている。外階段がふんだんに活用されて、3階へ、そして4階へとアクロバット的に上へ伸び、まさに立体迷路を構築しているのだ。──本書よりその他の書店
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