1『退屈な読書』(朝日新聞社)
あとがき『いざとなりゃ本ぐらい読むわよ』に続く、本の事件簿第二弾である。この本に収められたコラムを書いていた九六年から九八年にかけて、わたしは九年ぶりの長編を書き上げたかと思うと、月刊の純文芸誌に長…
あとがき『いざとなりゃ本ぐらい読むわよ』に続く、本の事件簿第二弾である。この本に収められたコラムを書いていた九六年から九八年にかけて、わたしは九年ぶりの長編を書き上げたかと思うと、月刊の純文芸誌に長…
AIが問う人間の本質人間は太古から、死による己の消滅に対抗し、死への恐怖を紛らわせてきた。その手段の一つが、自らの似姿を造ることなのではないか。自分たちの生きた証を壁画に残し、人形(ひとがた)を作り、…
ぶたのたねに、ぎゃはは単行本になった『かーかん、はあい』を読んでくれた友人が、こんなことを言う。「選ばれた絵本、どれもいいんだけど、ちょっと真面目(まじめ)すぎるんじゃない? 足りないとしたらナンセ…
文字が降る幻想的な世界文字が降ってくる町に住んでいる夫婦からの書簡が小説を構成している。え? 文字が降ってくるって? と読者は思われるだろう。そんな疑問などどこ吹く風。小説の中で、そして小説の中の手紙…
外部を招き入れて理解を実現著者の名前を見ただけで難しかろうと敬遠するのが無難とわかっていながら今回はあえて取り上げる。「天然知能」という言葉で、私が生きものの感覚として大事にしていることを論理的に考…
アメリカSF界のレジェンド、ハーラン・エリスン。『世界の中心で愛を叫んだけもの』や『死の鳥』で知られるカリスマSF作家の、犯罪小説やハードボイルドを中心とした非SFジャンルの初期傑作を精選した短篇集『愛な…
新たな旅への誘い日々書斎で文献と向き合ってばかりいると、無性に旅に出たくなる。日常をうんと離れて、できたら独りの旅を。いや、旅というよりは、じっと長い休日を過してみたい。 そういう日常のなかで、この…
『梁塵秘抄』――この素敵な本は、題で随分ソンをしているように思う。たまに持って歩いていると、若い友人たちから不思議そうな目で見られる。「わっ、さすが、モト古典の先生!」「なにそれ、宗教関係の本?」もの…
生き物すべてにあるに違いない哲学教室二十一話からなる動物哲学物語。ツキノワグマ、ニホンザル、ニホンジカ、コウモリ、ザトウクジラ、モグラ、アホウドリ、ナマケモノ、アルマジロ、オオアリクイ、カピバラ、イ…
他者と関係を結ぶのがかったるい。表層的に友達のふりをしてるのが楽だし、実際平和。若い世代だけじゃないと思う、そんな風に感じてるのは。この小説に登場する人物もそう。それぞれがガラス球の中にいて、自分を…