1『新訳 老人と海』(左右社)
「the boy=成人男性」の新解釈ヘミングウェイの代表作『老人と海』の新訳が上梓された。同作家の研究の第一人者今村楯夫による翻訳であり、巻末には手厚い解説も収録している。ノーベル文学賞の発表が近いが、同…
「the boy=成人男性」の新解釈ヘミングウェイの代表作『老人と海』の新訳が上梓された。同作家の研究の第一人者今村楯夫による翻訳であり、巻末には手厚い解説も収録している。ノーベル文学賞の発表が近いが、同…
共振する文章 近代日本の精神史を通覧近来まれな批評の力作だ。雑誌『すばる』の連載が元だそうで原稿用紙一○○○枚ある。分厚い。格闘の相手は政治学者、橋川文三。戦後言論界で異彩を放った。本書の文体は震えてい…
はじめて本屋で見かけたときは、マジ、ムカつきましたね。「どうせオイラは育ちが悪いよ、ケッ」と。諏内(すない)えみ『「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社・1540円)の発売は今年2月。長く…
毎朝の通勤中、便意に襲われることはないでしょうか。途中下車をして駅のトイレに駆け込んでも、長蛇の列で地獄。かといって遅刻しないために、会社や学校まで我慢し続けるのも、限界とのはざまでギリギリの闘いを…
世紀末を監視◆批判する「時漫」薬害エイズにオウムサリン。文字通り世紀末を想起させる二つの事件が、ともに法の裁きを受ける段階に至った(ALLREVIEWS事務局注:本書評執筆時期は1996年)。二十一世紀になってこ…
新たな視角含む強力無比の案内図夏目房之介はマンガにおけるロラン・バルトである。例えば彼は山岸凉子作『日出処の天子』の主人公の顔を論じている。その精妙な分析を読むと、抽象的な記号の集合にすぎないマンガ…
『梁塵秘抄』――この素敵な本は、題で随分ソンをしているように思う。たまに持って歩いていると、若い友人たちから不思議そうな目で見られる。「わっ、さすが、モト古典の先生!」「なにそれ、宗教関係の本?」もの…
『AV女優』にはまる『AV女優』(永沢光雄著、ビレッジセンター)を読んだ。アダルトヴィデオに出演している女優たちばかり四十二人のインタビュー集だ。五百七十三頁もある。けれど、読んであんまり面白いので、の…
愛すべき「新種」への義憤花の都の現在を分析し、その悪弊を摘出していく毒舌の多くは、熱烈なパリ讃歌と表裏をなしている。パリを批判するパリジャンに、心底この都市を嫌う者のいたためしはない。本書もまた、パ…
自然の価値、守るということ著者は元環境省自然環境局長。技官としての経歴をはじめ、国立公園や鹿児島県での勤務など現場の経験も長い。帯のキャッチコピーは「自然の“価値”とは何か」であり、いわば著者の畢生(…