1『未熟児を陳列した男:新生児医療の奇妙なはじまり』(原書房)
昨年、日本でもTwitterなどで話題になった奇跡の実話をご存じだろうか。まだまだ医療が未発達だった20世紀初頭のアメリカで、ただ死にゆく運命にあった7000人もの未熟児たちを救ったのが、自称「医師」の興行師、つ…


昨年、日本でもTwitterなどで話題になった奇跡の実話をご存じだろうか。まだまだ医療が未発達だった20世紀初頭のアメリカで、ただ死にゆく運命にあった7000人もの未熟児たちを救ったのが、自称「医師」の興行師、つ…


「父と子」の物語の終焉イスタンブルを分断するボスフォラス海峡を挟んで、東側がアジア、西側がヨーロッパ。トルコとは、東と西の混淆と融和の上にある文化の交差点です。訪れてみるとわかりますが、イスタンブル…


近代化の波がチベットにもたらしたものこの物語はチベットの奥地にあるマルナン村に、雪が降ったある朝の情景から始まります。語り手の〈ぼく〉は、雪の上に足跡をつけて歩く。すると、村長を務める父親が言った。…


しっとりとして、あでやかで宇野千代の『おはん』を高校生で読んだとき、こんな美しい、こんな一字のゆるぎもない小説があるものか、と感じ入った。もと正妻いま愛人という設定も面白かったし、ぐうたらな男のひな…


わからない世界を生きること彼女は文字どおり「わからない」ことを書いているのであり、「わからない」からこそ書いている。文学というものが、究極的には、世界が「わかる」ことの中にではなく、それが果てたとこ…


本好きによる本好きのためのような小説集。表題作は、小倉で高級旅館を営むかたわら、本を集め、本を読み、本について友人と語らった男の生涯を描く。毎朝、九官鳥のためにトルストイの箴言(しんげん)集『文読む…


商家の娘の烈しい自己肯定は時代原理への無意識の挑戦歌集『みだれ髪』を発表した1901(明治34)年、与謝野晶子はまだ満22歳だった。その子二十櫛(はたちくし)にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかなそれ…


近代から逃れた孤独なパンダパンダ。白黒の毛に覆われたモフモフの、中国が外交のために使う「友好のシンボル」としての贈り物。笹を齧る姿が黄色い声援を呼ぶ、動物園の人気者。このタイの現代小説の主人公は、あ…


例えば、麻薏湯。麻袋の材料となる植物である黄麻の若葉で作った台湾のスープだ。〈黄麻の、繊維がまだ固くなっていない先端部分の葉だけを摘み取る。〉〈竹箕の上で程よい力加減で揉み、若葉を細かくくだいていく…


記憶は物に宿る。それは具体的な形象と結びつくことで、継承される物語となる。例えば――。僕の部屋には一本のギターが眠っています。父さんから譲ってもらった古びたアコースティックギター。父さんは若い頃、フォ…
