書評

『野呂邦暢小説集成〈3〉草のつるぎ』(文遊社)

  • 2026/10/20
野呂邦暢小説集成〈3〉草のつるぎ  / 野呂 邦暢
野呂邦暢小説集成〈3〉草のつるぎ
  • 著者:野呂 邦暢
  • 監修:豊田 健次
  • 出版社:文遊社
  • 装丁:単行本(595ページ)
  • 発売日:2014-04-20
  • ISBN-10:4892570931
  • ISBN-13:978-4892570933
内容紹介:
匍匐、早駆け、射撃訓練、そして咽をしめつける渇き-新人自衛隊員たちの日常と肉体の煌きを描画し、芥川賞を受賞した「草のつるぎ」など真率な視線で描かれた作品群。初単行本化作品・連作小説『水辺の町』全篇収録。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

虚飾ない硬質な抒情

根強いファンを持つ作家・野呂邦暢の小説集成が刊行中だ。野呂が亡くなって、もう30年以上の時間が経(た)つのに、複数の出版社の著作で野呂の作品が読めるようになってきているのは、嬉(うれ)しい限り。

小説集成最新刊のこの巻には、芥川賞受賞作の「草のつるぎ」が収められている。自身が経験した、自衛官の訓練の日々を、みずみずしい文体で描いた。いま読み返すと、少し驚くくらい短い文章を畳み掛けている。たとえば――。

雨は去った。草原は新鮮になった。赤ん坊の肌のようにみずみずしい草になった。水で清められた葉身はかぐわしかった。ぼくらは午後、自動銃を使って地物を利用した射撃の要領を学んでいた。

虚飾のない、シンプルな文章で描く、硬質な抒情を得意とした。こんな抒情を書く作家、いまは数が少なくなったなあ、と思う。野呂が一部でいまだに人気がある理由だろう。

最後に。この巻には「水辺の町」が収められている。雑誌に掲載され、これまで単行本化されなかった、いわば幻の作品だ。野呂のファンが一人でも増えますように。
野呂邦暢小説集成〈3〉草のつるぎ  / 野呂 邦暢
野呂邦暢小説集成〈3〉草のつるぎ
  • 著者:野呂 邦暢
  • 監修:豊田 健次
  • 出版社:文遊社
  • 装丁:単行本(595ページ)
  • 発売日:2014-04-20
  • ISBN-10:4892570931
  • ISBN-13:978-4892570933
内容紹介:
匍匐、早駆け、射撃訓練、そして咽をしめつける渇き-新人自衛隊員たちの日常と肉体の煌きを描画し、芥川賞を受賞した「草のつるぎ」など真率な視線で描かれた作品群。初単行本化作品・連作小説『水辺の町』全篇収録。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2014年4月30日

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