書評
『田中陽造著作集 人外魔境篇』(文遊社)
脚本家の飾りないエッセイ
著者は、鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」や相米慎二監督の「セーラー服と機関銃」の脚本を担当し、1970年代には日活ロマンポルノ黄金期の脚本家として活躍した人物。奇才である。いわゆるシナリオ集ではない。脚本家の仕事は「文章を殺すこと」と考える著者が、シナリオを集めて本にするはずはない。この本に収められているのは、脚本家になる以前、週刊誌に連載していたルポと、映画監督や作品について呟(つぶや)くように記したエッセイだ。
映画についての文章が心に残る。まったく飾りたてない。しかし、「ムダの多い世界」で、人間が描きづらい状況で、映画を作ることの「不幸」が伝わってくる。
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