書評
『悲しみと無のあいだ』(文藝春秋)
父の被爆、作家の肉声に近く
青来有一は1958年生まれ。戦後世代でありながら、生地・長崎に落とされた原爆をめぐって小説を書いてきた。その一つの達成は、今年『人間のしわざ』として刊行されたが、本書では、より作家の肉声に近い形で小説は綴(つづ)られている。なくなった父親は被爆者だったが、原爆について、被爆体験についてほとんど語らないまま世を去った。作家である主人公の「わたし」は、父親が語らなかった余白をなんとか埋めようとする。
どうすればそれは埋められるのか。埋めることは許されるのか。ヒントは意外なところにあった。クロード・シモン『フランドルへの道』が援用される、架空の被爆経験の箇所は圧巻である。
ALL REVIEWSをフォローする
































