書評
『地鳴き、小鳥みたいな』(講談社)
小さな記憶縫い合わせる
著者、久しぶりの短篇(ぺん)集。4篇を収める。保坂和志さんの小説は、長篇『未明の闘争』以後、さらに先鋭化しているように感じてきた。唐突に(やや日本語の文法を逸脱して?)挟まれる「私は」の言葉、独特の句読点の打ち方。
たとえば冒頭に置かれた「夏、訃報、純愛」。いちばん短い小篇では、死んだ知り合い、猫、仕事で一度飲んだだけの「先生」の記憶のきれぎれが、縫い合わせるように語られる。
けっしてなめらかな文章ではない。だが、私たちの記憶は、少し違和感を醸すような、この文体みたいに繋(つな)がれているはず。読後、奇妙な感覚が残る。
保坂和志は、小説家が書いたことのない未踏の領域にいる。
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