書評
鴻巣 友季子「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>村田沙耶香『世界99』上・下(集英社) <2>シーグリッド・ヌーネス、桑原 洋子訳『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(早川書房) <3>鈴木結生『ゲーテはすべてを言った』(朝日新聞出版)
2025年「この3冊」
<1>村田沙耶香『世界99』上・下(集英社)
<2>シーグリッド・ヌーネス、桑原 洋子訳『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(早川書房)
<3>鈴木結生『ゲーテはすべてを言った』(朝日新聞出版)
<1>村田沙耶香の主題の表現手段が更新された一つのターニングポイントは「殺人出産」「余命」「清潔な結婚」という中短篇3作が発表された年だ。いずれも人間の生(性)老病死のタブー、いわゆるパンドラの箱にあまりにストレートに切り込むもので、それが最新の大作『世界99』にもつながっている。正気とは狂気の一つである。
<2>作者がシモーヌ・ヴェイユの言葉を借りて提示した「あなたの苦しみは何ですか?」は個人でありながら連帯することについてずばり問いかけた。
<3>作者がゲーテの格言を借りて提示した「ジャムか、サラダか」は近代以降の個人主義と包摂性の矛盾と、これからのヴィジョンをひと言で表現していてみごとだった。日本にあまりないアカデミックノベルとしても秀逸。
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