書評
『異類婚姻譚』(講談社)
小説にしか描けないたくらみ
4篇を収める。表題作の「異類婚姻譚」が第154回芥川賞を受賞した。結婚してもうすぐ4年が経(た)つ夫婦。「私」は専業主婦。夫はテレビ好きを宣言し、家で3時間は見続けている。かと思えば、iPadでコインを貯(た)めるだけのゲームに熱中する。ふと見ると、夫の顔が溶けだして、夫に似た何かに変容している。
夫婦のことを書いた小説。だが、似た者夫婦という古臭い言い回しを粉々にするような衝撃をラストに秘めている。愉(たの)しみを奪うので結末がどうなるのか書かないけれど、どうか、最後まで読んでみてほしい。
山に猫を捨てに行く話がこれほど効果的伏線だったとは! 小説にしか描けないたくらみに満ちている。
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