書評
『悪党たちのソ連帝国』(新潮社)
キャッチーなタイトルなので誤解を招きそうだが、第一線のロシア史研究者が堅固な学識に基づき、最新の知見も盛り込んで書いたソ連の通史である。個人の市民が主人公になる西欧の近代国家とは違って、ソ連は強権を握る指導者が法の上に立って「帝国」を統治してきた。本書はそういう史観に立ち、レーニンからスターリン、フルシチョフ、ブレジネフ、アンドロポフ、ゴルバチョフまで「悪党列伝」を繰り広げる。「悪党」というのは、善悪の尺度を超えて大国の運命を動かした存在を指し、道徳的な非難ではない。
興味深いのは、ソ連を共産党中心の巨大な「家族共同体」ととらえる視点である。エマニュエル・トッドの家族構造理論にも通じる発想だが、池田氏はトッドのように大風呂敷を広げず、「悪党」たちに密着して肖像を――人間臭いディテールも見逃さずに――丹念に描いてゆく。
歴史全体を貫く一本の糸のごとく、各章に演出家リュビーモフが顔を出して道案内をしてくれるのも、独創的な仕掛けで驚いた。イデオロギー的な立場からの党派的な議論を超えた、卓抜なソ連論になっている。
興味深いのは、ソ連を共産党中心の巨大な「家族共同体」ととらえる視点である。エマニュエル・トッドの家族構造理論にも通じる発想だが、池田氏はトッドのように大風呂敷を広げず、「悪党」たちに密着して肖像を――人間臭いディテールも見逃さずに――丹念に描いてゆく。
歴史全体を貫く一本の糸のごとく、各章に演出家リュビーモフが顔を出して道案内をしてくれるのも、独創的な仕掛けで驚いた。イデオロギー的な立場からの党派的な議論を超えた、卓抜なソ連論になっている。
ALL REVIEWSをフォローする







































