書評
『台湾生まれ 日本語育ち』(白水社)
自分は誰なのか、真摯な思索
表紙の写真を見てほしい。著者の温又柔さんの自己認識を正確に映し出したような、やどかり。温さんは紛れもない「日本語作家」である。3歳のときから、もう何十年も日本に住んでいる。でもどこかやどかりのようにして、日本語に住んでいる、という。「国籍は、台湾」。そこにきざすズレを、温さんは見逃さず、自分の問題として引き受け、あるときは傷つき、あるときはユーモアを交えながら、出来事をできるかぎり書きつける。運転免許の書き換えに行ったときに突きつけられた、ズシリと重い「法的事実」も、温さんはちょっとユーモラスに、でもやり場のない感情を抱えたまま、考える。自分はいったい誰なのか、と。真摯な思索の成果である。
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