書評

『来福の家』(白水社)

  • 2025/08/02
来福の家 / 温 又柔
来福の家
  • 著者:温 又柔
  • 出版社:白水社
  • 装丁:新書(278ページ)
  • 発売日:2016-09-22
  • ISBN-10:4560072086
  • ISBN-13:978-4560072080
内容紹介:
好去好来歌 来福の家台湾生まれ、日本育ちの主人公は、三つの母語の狭間で格闘する――。すばる文学賞佳作受賞の鮮烈なデビュー作「好去好来歌」を収録。3つの言語が奏でる新しい文学 『台湾… もっと読む
好去好来歌 来福の家

台湾生まれ、日本育ちの主人公は、三つの母語の狭間で格闘する――。すばる文学賞佳作受賞の鮮烈なデビュー作「好去好来歌」を収録。3つの言語が奏でる新しい文学
『台湾生まれ 日本語育ち』の著者の鮮烈なデビュー作、Uブックス版で登場!
台湾人の両親のもと、台湾で生まれ、日本で育った19歳の楊縁珠は、大学の中国語クラスで出会った麦生との恋愛をきっかけに、3つの言語が交錯する家族の遍歴を辿り、自分を見つめ直すが――。すばる文学賞佳作の「好去好来歌」に、希望の光がきざす表題作を併録。『台湾生まれ 日本語育ち』とあわせて読むと、著者の成長の過程も辿ることができる。
「ニホンゴ、中国語、台湾語、ママ語、すべて音として同等に混ざって生きている言葉たちを、温さんが文字として示していくそのありさまが、日本社会の中で自明ではない存在の人たちの生きざまそのものを表現している。そのほとばしるような熱い生の感覚が、この小説の言葉からはあふれてくる」(解説・星野智幸)

3つの言語の間で揺れる

今年、第64回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した『台湾生まれ 日本語育ち』の作家の、原点を示す小説集。表題作以外に中篇「好去好来歌(こうきょこうらいか)」を収録。

この小説の主人公は、楊縁珠(ようえんじゅ)。台湾人の両親が日本に移住したことで、3歳から日本に住んでいる主人公は、じつにさまざまな場面で、台湾語・中国語と日本語の間で翻弄され、母親や祖母との関係に悩む。

流暢ではない日本語しか話せなかった母親を恥ずかしく思い、「どうして、ママはふつうじゃないの?」と言い放つ場面は、読者の胸を打つ。移民と日本語文学の出会いを哀切に表現した小説でもある。

いま、最も活躍が期待される作家の出発を刻む佳品。
来福の家 / 温 又柔
来福の家
  • 著者:温 又柔
  • 出版社:白水社
  • 装丁:新書(278ページ)
  • 発売日:2016-09-22
  • ISBN-10:4560072086
  • ISBN-13:978-4560072080
内容紹介:
好去好来歌 来福の家台湾生まれ、日本育ちの主人公は、三つの母語の狭間で格闘する――。すばる文学賞佳作受賞の鮮烈なデビュー作「好去好来歌」を収録。3つの言語が奏でる新しい文学 『台湾… もっと読む
好去好来歌 来福の家

台湾生まれ、日本育ちの主人公は、三つの母語の狭間で格闘する――。すばる文学賞佳作受賞の鮮烈なデビュー作「好去好来歌」を収録。3つの言語が奏でる新しい文学
『台湾生まれ 日本語育ち』の著者の鮮烈なデビュー作、Uブックス版で登場!
台湾人の両親のもと、台湾で生まれ、日本で育った19歳の楊縁珠は、大学の中国語クラスで出会った麦生との恋愛をきっかけに、3つの言語が交錯する家族の遍歴を辿り、自分を見つめ直すが――。すばる文学賞佳作の「好去好来歌」に、希望の光がきざす表題作を併録。『台湾生まれ 日本語育ち』とあわせて読むと、著者の成長の過程も辿ることができる。
「ニホンゴ、中国語、台湾語、ママ語、すべて音として同等に混ざって生きている言葉たちを、温さんが文字として示していくそのありさまが、日本社会の中で自明ではない存在の人たちの生きざまそのものを表現している。そのほとばしるような熱い生の感覚が、この小説の言葉からはあふれてくる」(解説・星野智幸)

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2016年10月20日

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