書評

『鳥打ちも夜更けには』(河出書房新社)

  • 2025/11/15
鳥打ちも夜更けには / 金子 薫
鳥打ちも夜更けには
  • 著者:金子 薫
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(151ページ)
  • 発売日:2016-02-23
  • ISBN-10:4309024459
  • ISBN-13:978-4309024455
内容紹介:
不朽の古典『見聞記』に楽園と謳われた島の架空の港町。新町長の下、観光資源の美麗な蝶と花畑を護るため、海鳥を毒矢で殺す鳥打ちの職に、三人の青年が就いていた。しかし島の経済が陰りを見せるにつれ、鳥打ちの一人、天野は自らの為す仕事に疑念を抱く。問うてはいけない問いは、やがて町をあげての大騒動に発展して―三人の青年の自由を巡る圧倒的小説。

奇想天外、政治的な寓話

舞台は「架空の港町」と呼ばれる、とある島。そこでは、町長の意向を受け、主要産業を漁業から観光に変えて、花畑で育つアゲハチョウをその目玉にしている。ゆえに、アゲハを捕食する海鳥は、厳しく制限されなければならず、吹き矢で海鳥を殺す仕事――「鳥打ち」――が必要不可欠な仕事となる。

沖山、保田、天野の3人の鳥打ちが主たる登場人物。沖山が語り手である。3人はそれぞれ鳥打ちについての思想を持っている。その差異が、島に不穏な空気をもたらし、最後に待っているのは、奇想天外な破局だった……。

稠密(ちゅうみつ)な文章がいい。それから、こうした寓話こそが、すぐれて政治的であることを再確認させてくれる。期待大。
鳥打ちも夜更けには / 金子 薫
鳥打ちも夜更けには
  • 著者:金子 薫
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(151ページ)
  • 発売日:2016-02-23
  • ISBN-10:4309024459
  • ISBN-13:978-4309024455
内容紹介:
不朽の古典『見聞記』に楽園と謳われた島の架空の港町。新町長の下、観光資源の美麗な蝶と花畑を護るため、海鳥を毒矢で殺す鳥打ちの職に、三人の青年が就いていた。しかし島の経済が陰りを見せるにつれ、鳥打ちの一人、天野は自らの為す仕事に疑念を抱く。問うてはいけない問いは、やがて町をあげての大騒動に発展して―三人の青年の自由を巡る圧倒的小説。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2016年3月3日

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