書評
角田 光代「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>佐藤 正午『熟柿』(角川書店)<2>リチャード・フラナガン、渡辺 佐智江訳『第七問』(白水社)<3>伊東 順子『わたしもナグネだから』(筑摩書房)
2025年「この3冊」
<1>佐藤 正午『熟柿』(角川書店)
<2>リチャード・フラナガン、渡辺 佐智江訳『第七問』(白水社)
<3>伊東 順子『わたしもナグネだから』(筑摩書房)
<1>事故の加害者となった女性を描く『熟柿』は、たんたんとした文章で彼女の日々が綴(つづ)られる。絶望しても、裏切られても、繰り返すしかない生活が、私たちを救うのだと思わせてくれる小説だった。
<2>『第七問』。SF小説の巨匠、原爆開発のきっかけを作った物理学者、日本軍捕虜となった父親、それらが立体的に浮かび上がってつながり、答えの出ない問いを突きつける。答えが出なくとも、私たちは考え続けなければならない。
<3>韓国文化にくわしい著者が、海外移住したコリアンや在韓の中国人などから話を聞いて描かれた『わたしもナグネだから』。個人史から、世界の歴史が透けて見えてくるところが、本書のしずかな凄(すご)みだ。ときに壮絶ながら、けっして自由と尊厳をあきらめない人々の姿に、深く胸打たれた。
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