コラム
角田 光代「2024年 この3冊」毎日新聞|ハン・ガン『別れを告げない』(白水社)、江國香織『川のある街』(朝日新聞出版)、佐藤 正午『冬に子供が生まれる』(小学館)
2024年「この3冊」
(1)『別れを告げない』ハン・ガン著(白水社)
(2)『川のある街』江國香織著(朝日新聞出版)
(3)『冬に子供が生まれる』佐藤正午著(小学館)
<1>は、幻想的で静謐な語り口で、一九四八年に済州島で起きた虐殺事件について掘り下げていく。人が人にたいしてなし得るもっとも残酷なことを、語り手の女性と、その友人は、生死の境があいまいな空間で話し続ける。読むことがすでに体験だった。
<2>はタイトルどおり、川のある三つの街を舞台にした小説集。三話目で私は小説からものすごい幻影が立ち上がるのを感じ、震えた。時間という川のかたわらで、人が人とかかわり、生き、老いていくことの凄みが、しずかに脈打っている。
<3>には、ただただ驚いた。そんなことがあるのか、と思いつつ、そんなことはあるのだと細部に納得させられる。結末を知っていても、読み返したら何度でも驚くだろう。謎解きのような物語だが、謎とは私たちの人生と現実、そのものである。
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