書評
『熟柿』(KADOKAWA)
いつか我が子に会いたい。それだけを念じて生きる女性を描く長篇小説。妊娠中にひき逃げ事件を起こした「わたし」は、獄中で出産する。助手席で泥酔していた夫は警察官だったが辞職。生まれた子供を引き取った夫から、「わたし」は離婚を告げられる。
母親が犯罪者の子供と、母親に死なれた子供と、どちらがより不幸か。夫の問いは「わたし」を呪縛する。子供のために隠れて生きる「わたし」。しかし、我が子に会いたいという気持ちはおさえがたい。この手で抱きしめられなくても、せめて遠くから姿を見るだけでも。「わたし」は幼稚園や小学校への侵入を試みるが失敗する。
面会をあきらめた「わたし」は、子供を受取人にした生命保険に入る。山梨県石和温泉の旅館、岐阜県大垣市のパン工場、大阪市のパチンコ店、福岡市のホテル。土地と仕事を転々としながら保険料を払うためひたすら働く。投函することのない我が子への手紙を書き続けながら。
前科という軛は重い。次から次へと「わたし」に襲いかかる試練に、読者はハラハラの連続。意地悪な人間ばかりではないのが救いだ。
母親が犯罪者の子供と、母親に死なれた子供と、どちらがより不幸か。夫の問いは「わたし」を呪縛する。子供のために隠れて生きる「わたし」。しかし、我が子に会いたいという気持ちはおさえがたい。この手で抱きしめられなくても、せめて遠くから姿を見るだけでも。「わたし」は幼稚園や小学校への侵入を試みるが失敗する。
面会をあきらめた「わたし」は、子供を受取人にした生命保険に入る。山梨県石和温泉の旅館、岐阜県大垣市のパン工場、大阪市のパチンコ店、福岡市のホテル。土地と仕事を転々としながら保険料を払うためひたすら働く。投函することのない我が子への手紙を書き続けながら。
前科という軛は重い。次から次へと「わたし」に襲いかかる試練に、読者はハラハラの連続。意地悪な人間ばかりではないのが救いだ。
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