書評

『熟柿』(KADOKAWA)

  • 2025/07/18
熟柿 / 佐藤 正午
熟柿
  • 著者:佐藤 正午
  • 出版社:KADOKAWA
  • 装丁:単行本(368ページ)
  • 発売日:2025-03-27
  • ISBN-10:4041146593
  • ISBN-13:978-4041146590
内容紹介:
激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは、轢き逃げの罪に問われ、裁判中に息子、拓を出産する。出所後息子に会いたいがあまり、園児連れ去り事件を起こした彼女は息子との… もっと読む
激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは、轢き逃げの罪に問われ、裁判中に息子、拓を出産する。出所後息子に会いたいがあまり、園児連れ去り事件を起こした彼女は息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。自らの罪を隠して生きる彼女にやがて、過去にまつわるある秘密が明かされる。『鳩の撃退法』(山田風太郎賞受賞)『月の満ち欠け』(直木賞受賞)著者による最新長編小説。
いつか我が子に会いたい。それだけを念じて生きる女性を描く長篇小説。妊娠中にひき逃げ事件を起こした「わたし」は、獄中で出産する。助手席で泥酔していた夫は警察官だったが辞職。生まれた子供を引き取った夫から、「わたし」は離婚を告げられる。

母親が犯罪者の子供と、母親に死なれた子供と、どちらがより不幸か。夫の問いは「わたし」を呪縛する。子供のために隠れて生きる「わたし」。しかし、我が子に会いたいという気持ちはおさえがたい。この手で抱きしめられなくても、せめて遠くから姿を見るだけでも。「わたし」は幼稚園や小学校への侵入を試みるが失敗する。

面会をあきらめた「わたし」は、子供を受取人にした生命保険に入る。山梨県石和温泉の旅館、岐阜県大垣市のパン工場、大阪市のパチンコ店、福岡市のホテル。土地と仕事を転々としながら保険料を払うためひたすら働く。投函することのない我が子への手紙を書き続けながら。

前科という軛は重い。次から次へと「わたし」に襲いかかる試練に、読者はハラハラの連続。意地悪な人間ばかりではないのが救いだ。
熟柿 / 佐藤 正午
熟柿
  • 著者:佐藤 正午
  • 出版社:KADOKAWA
  • 装丁:単行本(368ページ)
  • 発売日:2025-03-27
  • ISBN-10:4041146593
  • ISBN-13:978-4041146590
内容紹介:
激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは、轢き逃げの罪に問われ、裁判中に息子、拓を出産する。出所後息子に会いたいがあまり、園児連れ去り事件を起こした彼女は息子との… もっと読む
激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは、轢き逃げの罪に問われ、裁判中に息子、拓を出産する。出所後息子に会いたいがあまり、園児連れ去り事件を起こした彼女は息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。自らの罪を隠して生きる彼女にやがて、過去にまつわるある秘密が明かされる。『鳩の撃退法』(山田風太郎賞受賞)『月の満ち欠け』(直木賞受賞)著者による最新長編小説。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年5月17日

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