書評

『近親性交: 語られざる家族の闇』(小学館)

  • 2025/07/28
近親性交: 語られざる家族の闇 / 阿部 恭子
近親性交: 語られざる家族の闇
  • 著者:阿部 恭子
  • 出版社:小学館
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2025-06-02
  • ISBN-10:409825493X
  • ISBN-13:978-4098254934
内容紹介:
“本書で綴っているのは、加害者家族との関わりの中で露呈した事実であり、これまで明るみに出ることはなかった家族の闇である”。長年にわたり犯罪の加害者家族支援を行ってきた著者が、これま… もっと読む
“本書で綴っているのは、加害者家族との関わりの中で露呈した事実であり、これまで明るみに出ることはなかった家族の闇である”。長年にわたり犯罪の加害者家族支援を行ってきた著者が、これまで頑なに沈黙を貫いてきた「近親性交」当事者たちの心の奥深くに分け入り、自ら関わった具体的な事例を提示。「家族神話」の弊害を詳らかにし、家族という密室から助けを求める叫びに蓋をしてきた日本社会のタブーに風穴を開ける。

目次
第一章 父という権力(息子が殺人犯となった理由;家族の敵は家族;父と娘の対立;父子性交の実態)
第二章 母という暴力(無期囚と家族;息子の子を出産した母;性犯罪者の母の責任;母子性交の実態)
第三章 長男という呪い(姉による性暴力;傷ついた者たち;きょうだい性交の実態)
第四章 近親性交で生まれた子どもたち(近親性交による妊娠;出自を知る権利)
第五章 近親性交が生じる背景(家族による性の束縛;家族の孤立と親密化 ほか)
ショッキングな書名だ。著者の阿部恭子氏は≪二○○八年、日本で初めて犯罪加害者家族の支援団体を設立≫。活動を続けるうち、家族内の性加害/被害の実例を多く知る。

例1。地元名士の息子が元同級生を刃物でメッタ刺し。息子はかつて父から性加害を受け、元同級生はゲイのパートナーだった。真犯人は私です、と父はうなだれる。例2。父権的な父親と病弱な母親。五人きょうだいの長女は一家を仕切るうち父との性交渉が日常に。結婚後、夫の詐欺罪に連座して逮捕も間近だ。例3。地方の裕福な家庭の兄と妹。妹は兄を慕うも疎まれ引きこもりに。兄は都会で挫折して帰郷し自分も引きこもりに。両親亡きあと、兄妹は子をうみ共に暮らす。著者だから知りえた秘密の数々が記される。本書は≪家族が有する暴力性≫を描く。

極端な事例から何がわかるのか。男尊女卑。世間体。偏見。排除と抑圧。弱者を踏みつけにする。こうした理不尽な力が、家族という逃れようのない場にはたらくと、人びとの関係はたちまち歪み、さまざまなかたちの暴力や病態をうみ出す。なかなか語られなかった家族の暗部を明るみに出す、勇気ある書物だ。
近親性交: 語られざる家族の闇 / 阿部 恭子
近親性交: 語られざる家族の闇
  • 著者:阿部 恭子
  • 出版社:小学館
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2025-06-02
  • ISBN-10:409825493X
  • ISBN-13:978-4098254934
内容紹介:
“本書で綴っているのは、加害者家族との関わりの中で露呈した事実であり、これまで明るみに出ることはなかった家族の闇である”。長年にわたり犯罪の加害者家族支援を行ってきた著者が、これま… もっと読む
“本書で綴っているのは、加害者家族との関わりの中で露呈した事実であり、これまで明るみに出ることはなかった家族の闇である”。長年にわたり犯罪の加害者家族支援を行ってきた著者が、これまで頑なに沈黙を貫いてきた「近親性交」当事者たちの心の奥深くに分け入り、自ら関わった具体的な事例を提示。「家族神話」の弊害を詳らかにし、家族という密室から助けを求める叫びに蓋をしてきた日本社会のタブーに風穴を開ける。

目次
第一章 父という権力(息子が殺人犯となった理由;家族の敵は家族;父と娘の対立;父子性交の実態)
第二章 母という暴力(無期囚と家族;息子の子を出産した母;性犯罪者の母の責任;母子性交の実態)
第三章 長男という呪い(姉による性暴力;傷ついた者たち;きょうだい性交の実態)
第四章 近親性交で生まれた子どもたち(近親性交による妊娠;出自を知る権利)
第五章 近親性交が生じる背景(家族による性の束縛;家族の孤立と親密化 ほか)

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年6月28日

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