ショッキングな書名だ。著者の阿部恭子氏は≪二○○八年、日本で初めて犯罪加害者家族の支援団体を設立≫。活動を続けるうち、家族内の性加害/被害の実例を多く知る。
例1。地元名士の息子が元同級生を刃物でメッタ刺し。息子はかつて父から性加害を受け、元同級生はゲイのパートナーだった。真犯人は私です、と父はうなだれる。例2。父権的な父親と病弱な母親。五人きょうだいの長女は一家を仕切るうち父との性交渉が日常に。結婚後、夫の詐欺罪に連座して逮捕も間近だ。例3。地方の裕福な家庭の兄と妹。妹は兄を慕うも疎まれ引きこもりに。兄は都会で挫折して帰郷し自分も引きこもりに。両親亡きあと、兄妹は子をうみ共に暮らす。著者だから知りえた秘密の数々が記される。本書は≪家族が有する暴力性≫を描く。
極端な事例から何がわかるのか。男尊女卑。世間体。偏見。排除と抑圧。弱者を踏みつけにする。こうした理不尽な力が、家族という逃れようのない場にはたらくと、人びとの関係はたちまち歪み、さまざまなかたちの暴力や病態をうみ出す。なかなか語られなかった家族の暗部を明るみに出す、勇気ある書物だ。