書評

『『三国志』を読む』(岩波書店)

  • 2025/07/21
『三国志』を読む / 井波 律子
『三国志』を読む
  • 著者:井波 律子
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:文庫(320ページ)
  • 発売日:2025-05-19
  • ISBN-10:4006023707
  • ISBN-13:978-4006023706
内容紹介:
日中両国でいまも書きつがれ、読みつがれている“三国志”の物語。その原点である正史『三国志』をひもとき、曹操、劉備、孫権らそれぞれの伝記の史実のなかに、英雄たちの真の姿を読む。『三国… もっと読む
日中両国でいまも書きつがれ、読みつがれている“三国志”の物語。その原点である正史『三国志』をひもとき、曹操、劉備、孫権らそれぞれの伝記の史実のなかに、英雄たちの真の姿を読む。『三国志』と『三国志演義』の両方を訳した第一人者が、平明な語り口で歴史の醍醐味と物語のおもしろさを存分に語る。

目次
第一回 正史『三国志』と陳寿の伝記(『三国志』の時代;正史『三国志』;陳寿の伝記を読む)
第二回 「魏書」―〈武帝紀〉を中心に(紀伝体の書き出し;裴松之の注を読む ほか)
第三回 「蜀書」―〈先主伝〉〈諸葛亮伝〉を中心に(劉備の出自;関羽との出会い ほか)
第四回 「呉書」―〈呉主伝〉〈周瑜・魯粛・呂蒙伝〉を中心に(父、孫堅;兄、孫策 ほか)
付録1 吉川幸次郎『三国志実録』解説
付録2 花田清輝『随筆三国志』解説―花田清輝の読み解く三国志世界
曹操、孫権、劉備の三傑が覇を争った三国時代。その歴史をまとめたのが『三国志』だ。陳寿が個人で書いた書物が正史とされた。『三国志演義』は民間説話も加えて脚色した後代の読み物で、これと別である。

後漢末期、宦官(かんがん)(濁流派)と官僚(清流派)が争い、道教系太平道が黄巾(こうきん)の乱を起こした。曹操、孫堅、劉備は兵を率い乱を鎮圧、魏、呉、蜀が鼎立(ていりつ)した。結局、魏を倒した西晋が全土を統一。陳寿はその西晋の役人で、公平な歴史記述が光る。

本書は著者・井波氏のセミナーの記録。まず原文を読む。≪由是先主遂詣亮、凡三往、乃見。≫劉備は諸葛亮を三度訪問し、やっと会えた。三顧の礼である。陳寿の筆は淡々と進むが、時に劉備びいきの心情が透けてみえ、微妙な味わいがある。

陳寿は親不孝だと評判が悪い。著者は彼の人物を紹介し、歴史家としての資質を讃(たた)えて名誉を回復する。

二千年も昔のテキストが著者の手にかかると、血の通った人間ドラマとして眼前に生き返る。古典が豊かな人智の宝庫だと気付かされる。そんな二一年前の旧著が、岩波現代文庫版で甦(よみがえ)った。優れた中国文学者の温かな人柄が伝わる好著である。
『三国志』を読む / 井波 律子
『三国志』を読む
  • 著者:井波 律子
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:文庫(320ページ)
  • 発売日:2025-05-19
  • ISBN-10:4006023707
  • ISBN-13:978-4006023706
内容紹介:
日中両国でいまも書きつがれ、読みつがれている“三国志”の物語。その原点である正史『三国志』をひもとき、曹操、劉備、孫権らそれぞれの伝記の史実のなかに、英雄たちの真の姿を読む。『三国… もっと読む
日中両国でいまも書きつがれ、読みつがれている“三国志”の物語。その原点である正史『三国志』をひもとき、曹操、劉備、孫権らそれぞれの伝記の史実のなかに、英雄たちの真の姿を読む。『三国志』と『三国志演義』の両方を訳した第一人者が、平明な語り口で歴史の醍醐味と物語のおもしろさを存分に語る。

目次
第一回 正史『三国志』と陳寿の伝記(『三国志』の時代;正史『三国志』;陳寿の伝記を読む)
第二回 「魏書」―〈武帝紀〉を中心に(紀伝体の書き出し;裴松之の注を読む ほか)
第三回 「蜀書」―〈先主伝〉〈諸葛亮伝〉を中心に(劉備の出自;関羽との出会い ほか)
第四回 「呉書」―〈呉主伝〉〈周瑜・魯粛・呂蒙伝〉を中心に(父、孫堅;兄、孫策 ほか)
付録1 吉川幸次郎『三国志実録』解説
付録2 花田清輝『随筆三国志』解説―花田清輝の読み解く三国志世界

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年6月21日

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