書評

『ひのえうま 江戸から令和の迷信と日本社会』(光文社)

  • 2025/06/23
ひのえうま 江戸から令和の迷信と日本社会 / 吉川 徹
ひのえうま 江戸から令和の迷信と日本社会
  • 著者:吉川 徹
  • 出版社:光文社
  • 装丁:新書(248ページ)
  • 発売日:2025-02-19
  • ISBN-10:433410553X
  • ISBN-13:978-4334105532
内容紹介:
一九六六(昭和四一)年、日本の出生数が統計史上最低を記録した。原因となったのは迷信。六〇年に一度めぐってくる干支、丙午(ひのえうま)にまつわる俗言のためだった。高度経済成長の只中… もっと読む
一九六六(昭和四一)年、日本の出生数が統計史上最低を記録した。原因となったのは迷信。六〇年に一度めぐってくる干支、丙午(ひのえうま)にまつわる俗言のためだった。高度経済成長の只中、二つのベビーブームの間にあって、たった一年、なぜ迷信がそこまでの出生減をもたらしたのか?そしてさまざまな「都市伝説」がささやかれてきたひのえうまの人生とは、実際にはどのようなものだったのか?自身、昭和のひのえうま生まれの計量社会学者が、迷信の成立した江戸期にまでさかのぼり、周期的な拡散・浸透のタイムラインをつぶさに追いながら、ただ日本でだけ生じた特異な出生減を「社会現象」として読み解く。

目次
第1章 江戸庶民に拡散した俗信(社会に跳ね返る迷信;始まりは八百屋お七 ほか)
第2章 明治のひのえうまと近代日本(痕跡は意外に小規模;日露戦勝の子たち ほか)
第3章 出生秘話―昭和のひのえうまの真実(「子どもは2人」の時代に;消えた赤ちゃんは16万4千人 ほか)
第4章 塞翁がひのえうま―昭和のひのえうまの人生(「レガシー」の始まり;昭和のひのえうまとはだれか ほか)
終章 どうなる令和のひのえうま(毎年がひのえうま;少子化の主因は「母集団」の縮小 ほか)
六○年ごとに巡ってくるひのえうま(丙午)。一九六六(昭和四一)年には、出生数が前年の四分の三以下に落ち込んだ。丙午生まれの女性は≪気性が荒…く、婚姻に差し障≫る。放火犯八百屋お七が丙午だったので広まった江戸時代の迷信だ。

さて、そのひのえうまが来年。計量社会学者の著者は、前回なぜ顕著な出生減が起きたのか考察する。マスメディアの情報が人びとに影響した。受胎調節が当たり前になっていた。子のいる夫婦が、二子目以降を見送った。前年や翌年に出産をずらす夫婦もいた。そのためがくんと出生数が減った。迷信がそのまま信じられたのではない。これだけ情報が広まると生まれた子が将来不利かもと、親が合理的に心配したのだ。

二○二六年はどうなるか? 顕著な出生減は起きないと著者は予測する。出生数はもう十分低い水準だ。干支(えと)になじみもなくなった。昭和のひのえうまは無事六○歳になっている。イエ制度が弱まり夫婦は気を使わないですむ。説得力ある分析だ。

日本だけの特異な現象だったひのえうま。社会学の立場からデータと理論にもとづき、実態を明らかにした。国際的にも意味ある研究だ。
ひのえうま 江戸から令和の迷信と日本社会 / 吉川 徹
ひのえうま 江戸から令和の迷信と日本社会
  • 著者:吉川 徹
  • 出版社:光文社
  • 装丁:新書(248ページ)
  • 発売日:2025-02-19
  • ISBN-10:433410553X
  • ISBN-13:978-4334105532
内容紹介:
一九六六(昭和四一)年、日本の出生数が統計史上最低を記録した。原因となったのは迷信。六〇年に一度めぐってくる干支、丙午(ひのえうま)にまつわる俗言のためだった。高度経済成長の只中… もっと読む
一九六六(昭和四一)年、日本の出生数が統計史上最低を記録した。原因となったのは迷信。六〇年に一度めぐってくる干支、丙午(ひのえうま)にまつわる俗言のためだった。高度経済成長の只中、二つのベビーブームの間にあって、たった一年、なぜ迷信がそこまでの出生減をもたらしたのか?そしてさまざまな「都市伝説」がささやかれてきたひのえうまの人生とは、実際にはどのようなものだったのか?自身、昭和のひのえうま生まれの計量社会学者が、迷信の成立した江戸期にまでさかのぼり、周期的な拡散・浸透のタイムラインをつぶさに追いながら、ただ日本でだけ生じた特異な出生減を「社会現象」として読み解く。

目次
第1章 江戸庶民に拡散した俗信(社会に跳ね返る迷信;始まりは八百屋お七 ほか)
第2章 明治のひのえうまと近代日本(痕跡は意外に小規模;日露戦勝の子たち ほか)
第3章 出生秘話―昭和のひのえうまの真実(「子どもは2人」の時代に;消えた赤ちゃんは16万4千人 ほか)
第4章 塞翁がひのえうま―昭和のひのえうまの人生(「レガシー」の始まり;昭和のひのえうまとはだれか ほか)
終章 どうなる令和のひのえうま(毎年がひのえうま;少子化の主因は「母集団」の縮小 ほか)

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年5月10日

毎日新聞のニュース・情報サイト。事件や話題、経済や政治のニュース、スポーツや芸能、映画などのエンターテインメントの最新ニュースを掲載しています。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
橋爪 大三郎の書評/解説/選評
ページトップへ