書評

『日本近代文学との戦い―後藤明生遺稿集』(柳原出版)

  • 2026/04/04
日本近代文学との戦い―後藤明生遺稿集 / 後藤 明生
日本近代文学との戦い―後藤明生遺稿集
  • 著者:後藤 明生
  • 編集:乾口 達司
  • 出版社:柳原出版
  • 装丁:単行本(316ページ)
  • 発売日:2004-04-30
  • ISBN-10:4840946027
  • ISBN-13:978-4840946025
内容紹介:
二葉亭、漱石、学生、私語、ウーロン茶、シーシー蝉、雨戸、文部省文体…と格闘する“内向の世代”の作家=後藤明生の遺稿集。連作小説集(表題作)の他、講演・講義録・エッセイ・談話・書評等、… もっと読む
二葉亭、漱石、学生、私語、ウーロン茶、シーシー蝉、雨戸、文部省文体…と格闘する“内向の世代”の作家=後藤明生の遺稿集。連作小説集(表題作)の他、講演・講義録・エッセイ・談話・書評等、“千円札文学論”にもとづく多彩な「格闘」の軌跡を浮き彫りにする。

目次
1 日本近代文学との戦い(私語と格闘;二葉亭四迷の罠;楕円と誤植 ほか)
2 謎の探求、謎の創造(三角関係の輻輳―「鍵」の対話的構造;モノローグとダイアローグ―梅崎春生『幻花』と武田泰淳『目まいのする散歩』;講義録より―二葉亭四迷『浮雲』 ほか)
3 出会いと伝説(新庄嘉章先生と私;消えた座談会;不思議な発見 ほか)
ふっと思い出す話(私の中の「ふるさと」;1994年の極私的総括;エッセイ集と小説集 ほか)
麓迷亭通信(麓迷亭通信;栗とスズメ蜂)

晩年の小説家切実さ胸打つ

後藤明生が亡くなってから五年。ゴーゴリなどのロシア文学に裏打ちされた確かな文学観と、独特のユーモアは多くのファンを持っていた。

私はあまりよい読者ではなかった。折に触れて読む程度だった。だが、この本に収められている最晩年の小説、とりわけタイトルにもなっている短編集には、完全に打ちのめされた。後藤は、二葉亭四迷が書かなくなったことの謎に迫ろうとして、二葉亭と戦う。大学の講義でも戦う。ペットボトルを口飲みし、後ろを向いて私語する学生と戦う。回想の中で蝉と戦い、病気と戦った。

後藤は自分の日常を生きながら、複数の戦いをずっと続けていた。幻想的な部分も、学問研究的な部分もある。だが、すべてが小説になっている。

一読、小説のように見えないかもしれない。エッセイではないか、研究ではないか、と訝(いぶか)しく思うかもしれない。だが、後藤明生という作家にとって、小説はこの形でしかあり得なかった。その切実さが胸に響く。もう少し、できればあと数篇、後藤の短編を読みたかった。遅まきながら、彼の不在が現代文学に深刻な影響を与えていることに思い到った。
日本近代文学との戦い―後藤明生遺稿集 / 後藤 明生
日本近代文学との戦い―後藤明生遺稿集
  • 著者:後藤 明生
  • 編集:乾口 達司
  • 出版社:柳原出版
  • 装丁:単行本(316ページ)
  • 発売日:2004-04-30
  • ISBN-10:4840946027
  • ISBN-13:978-4840946025
内容紹介:
二葉亭、漱石、学生、私語、ウーロン茶、シーシー蝉、雨戸、文部省文体…と格闘する“内向の世代”の作家=後藤明生の遺稿集。連作小説集(表題作)の他、講演・講義録・エッセイ・談話・書評等、… もっと読む
二葉亭、漱石、学生、私語、ウーロン茶、シーシー蝉、雨戸、文部省文体…と格闘する“内向の世代”の作家=後藤明生の遺稿集。連作小説集(表題作)の他、講演・講義録・エッセイ・談話・書評等、“千円札文学論”にもとづく多彩な「格闘」の軌跡を浮き彫りにする。

目次
1 日本近代文学との戦い(私語と格闘;二葉亭四迷の罠;楕円と誤植 ほか)
2 謎の探求、謎の創造(三角関係の輻輳―「鍵」の対話的構造;モノローグとダイアローグ―梅崎春生『幻花』と武田泰淳『目まいのする散歩』;講義録より―二葉亭四迷『浮雲』 ほか)
3 出会いと伝説(新庄嘉章先生と私;消えた座談会;不思議な発見 ほか)
ふっと思い出す話(私の中の「ふるさと」;1994年の極私的総括;エッセイ集と小説集 ほか)
麓迷亭通信(麓迷亭通信;栗とスズメ蜂)

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2004年6月10日

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