コラム

橋爪 大三郎「2023年 この3冊」毎日新聞|<1>東浩紀『訂正可能性の哲学』(ゲンロン)、<2>野田智義『コンテクスト・マネジメント 個を活かし、経営の質を高める』(光文社)、<3>斎藤幸平『マルクス解体 プロメテウスの夢とその先』(講談社)

  • 2025/04/14

2023年「この3冊」

<1>東浩紀『訂正可能性の哲学』(ゲンロン)

<2>野田智義『コンテクスト・マネジメント 個を活かし、経営の質を高める』(光文社)

<3>斎藤幸平『マルクス解体 プロメテウスの夢とその先』(講談社)


<1>は、本年六月刊の『観光客の哲学 増補版』の続編。頑なに原則にこだわるのでなく、柔軟に自己の再定義に開かれている思索はどうすれば可能か。これまで誰も気づかず深く考えなかったテーマを、ウィトゲンシュタインやルソーやドストエフスキーを手がかりに掘り下げていく。姉妹編で負けず劣らずに充実の新書『訂正する力』も超お勧めだ。

<2>は、大学院大学至善館の講義シリーズ第二弾。企業とは、経営とは? ど真ん中の直球だ。人間らしく働くとはどういうことか。こんなに充実したビジネス本は初めてだ。野田さんありがとう。

<3>は、「人新世」をリードする著者の渾身の書。晩期マルクスの思索を読み解き、脱成長に舵(かじ)を切る必然を発見する。ポスト資本主義を模索する最前線に、脱成長コミュニズムが名のりをあげた。

訂正可能性の哲学 / 東浩紀
訂正可能性の哲学
  • 著者:東浩紀
  • 出版社:ゲンロン
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(364ページ)
  • 発売日:2023-09-01
  • ISBN-10:4907188501
  • ISBN-13:978-4907188504
内容紹介:
正しいことしか許されない時代に、「誤る」ことの価値を考える。
世界を覆う分断と人工知能の幻想を乗り越えるためには、「訂正可能性」に開かれることが必要だ。ウィトゲンシュタインを、ルソーを、ドストエフスキーを、アーレントを新たに読み替え、ビッグデータからこぼれ落ちる「私」の固有性をすくい出す。ベストセラー『観光客の哲学』をさらに先に進める、著者30年の到達点。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。


コンテクスト・マネジメント 個を活かし、経営の質を高める / 野田 智義
コンテクスト・マネジメント 個を活かし、経営の質を高める
  • 著者:野田 智義
  • 出版社:光文社
  • 装丁:単行本(424ページ)
  • 発売日:2023-09-21
  • ISBN-10:4334100589
  • ISBN-13:978-4334100582
内容紹介:
『経営リーダーのための社会システム論』(宮台真司、野田智義)に続く、「至善館講義シリーズ」の第二弾。組織とは、1人ではできないことを成し遂げるための装置であり、経営とは、人を通じて… もっと読む
『経営リーダーのための社会システム論』(宮台真司、野田智義)に続く、「至善館講義シリーズ」の第二弾。組織とは、1人ではできないことを成し遂げるための装置であり、経営とは、人を通じてよりよいことを持続的になすことだ。では、人と組織の力を最大限に発揮するために、経営者リーダーが果たすべき役割とは何だろうか。ハーバードビジネススクールの経営政策プロセス学派は、その答えを、企業コンテクストのマネジメントに見出す。価値創造の主体が自律的で創造的な個に大きくシフトする21世紀、経営者リーダーは、企業コンテクストを構築し息吹きを吹き込みながら、経営プロセスに介入し、個の力を組織の能力へと昇華させる必要がある。コンテクスト・マネジメントを切り口に、過去50年の欧米組織戦略論の知見を統合する著者渾身の一冊。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。


マルクス解体 プロメテウスの夢とその先 / 斎藤 幸平
マルクス解体 プロメテウスの夢とその先
  • 著者:斎藤 幸平
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(432ページ)
  • 発売日:2023-10-26
  • ISBN-10:4065318319
  • ISBN-13:978-4065318317
内容紹介:
いまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代… もっと読む
いまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。

目次
第1部 マルクスの環境思想とその忘却(物質代謝論と環境危機;マルクスとエンゲルスと環境思想;ルカーチの物質代謝論と人新世の一元論批判)
第2部 人新世の生産力批判(一元論と自然の非同一性;ユートピア社会主義の再来と資本の生産力)
第3部 脱成長コミュニズムへ(マルクスと脱成長コミュニズム―MEGAと1868年以降の大転換;脱成長コミュニズムと富の潤沢さ)

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ

初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2023年12月16日

毎日新聞のニュース・情報サイト。事件や話題、経済や政治のニュース、スポーツや芸能、映画などのエンターテインメントの最新ニュースを掲載しています。

関連記事
ページトップへ