コラム
沼野 充義「2023年 この3冊」毎日新聞|<1>四方田犬彦『大泉黒石 わが故郷は世界文学』(岩波書店)、<2>ビタリー・テルレツキー『サバキスタン 全3巻』(トゥーヴァージンズ)、<3>サヴィヨン・リーブレヒト『砂漠の林檎 イスラエル短編傑作選』(河出書房新社)
2023年「この3冊」
<1>四方田犬彦『大泉黒石 わが故郷は世界文学』(岩波書店)
<2>ビタリー・テルレツキー『サバキスタン 全3巻』(トゥーヴァージンズ)
<3>サヴィヨン・リーブレヒト『砂漠の林檎 イスラエル短編傑作選』(河出書房新社)
<1>は、日本文学史からほとんど忘れ去られていた、ロシア人を父とする作家の破天荒な生涯と作品を論じた初めての本格的評伝。黒石がいかにユニークな存在であったかよく分かる。また、彼を排斥した日本文壇の狭量さも見えてくる。<2>はロシア出身の若手二人組による、架空の独裁国家を描いた漫画。全体主義をこのようにパロディーにした作品が、今ロシア人のアーティストから発信されたことには大きな意味がある。ロシアは決してプーチン支持一色ではない。
<3>は、ヘブライ語文学の第一人者による、イスラエル文学のオリジナル・アンソロジー。現代のイスラエルの文化は、強硬にガザを破壊するような政治家に決して代表されるわけではない。本書を読めば、もっと多彩で、複雑で、繊細な陰影に富んでいることがよく分かる。
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