コラム

中村桂子「2023年 この3冊」毎日新聞|<1>西田洋平『人間非機械論 サイバネティクスが開く未来』(講談社選書メチエ)、<2>中沢新一『カイエ・ソバージュ[完全版]』(講談社選書メチエ)、<3>ロビン・ダンバー『宗教の起源 私たちにはなぜ<神>が必要だったのか(白揚社)

  • 2025/03/13

2023年「この3冊」

<1>西田洋平『人間非機械論 サイバネティクスが開く未来』(講談社選書メチエ)

<2>中沢新一『カイエ・ソバージュ[完全版]』(講談社選書メチエ)

<3>ロビン・ダンバー『宗教の起源 私たちにはなぜ<神>が必要だったのか(白揚社)

この道を進み続けて大丈夫なのだろうか。のんびり屋を自認しながらも、猛暑の中で戦争、虐待、差別など人間とは何かを考えずにはおられず選んだ三冊だ。

<1>生成AIで会議用文書を作成し、AIが人間を超えると言う人々の多い中で、人間(生物)と機械を峻別(しゅんべつ)するサイバネティック・パラダイムを示す。ここから構築される情報学に期待する。

<2>形而上(けいじじょう)学化された人間の思考に対し、対称性の論理で作動する流動的知性を呼び戻す「対称性人類学」は魅力だ。権力、格差などの言葉に疲れているので。

<3>宗教も考えざるを得ない。社会脳や相手の心を想像するメンタライジングなど進化心理学の立場から、信仰心が生まれ世界宗教になる過程を解く。ここからなぜ戦争が生まれるのだろう。

人間非機械論 サイバネティクスが開く未来 / 西田 洋平
人間非機械論 サイバネティクスが開く未来
  • 著者:西田 洋平
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(336ページ)
  • 発売日:2023-06-12
  • ISBN-10:4065317789
  • ISBN-13:978-4065317785
内容紹介:
AIは、人間にはなれない。けれども、AIの進歩は、現代人の思考を変える?現代科学の系譜をたどり、私たちの世界観を根本から覆す科学論!近年では、人間の知性を超えるAIが大真面目に考えられ… もっと読む
AIは、人間にはなれない。けれども、AIの進歩は、現代人の思考を変える?
現代科学の系譜をたどり、私たちの世界観を根本から覆す科学論!

近年では、人間の知性を超えるAIが大真面目に考えられている。チェスや将棋のAIが人間を圧倒するだけではなく、ChatGPT、Midjourney(ミッドジャーニー)といった、文章、絵、音楽などの自動生成AIは、近年ますます高度になっている。将来は、様々な分野で機械が人間にとって代わるかもしれない。
実は、このAIの源流にあるのが、コンピューターの父フォン・ノイマンの影響のもと、二〇世紀の知的世界を席巻し、認知科学やSFに影響を与えた科学、サイバネティクスである。しかし、その起源には、現代科学と相反する思想が胚胎していた――。
サイバネティクスの創始者ノーバート・ウィーナーの思想から、その歴史を現代までたどり直し、徹底することで、不確かな世界を生き延びるための生命の科学を立ち上げる。情報・生命・社会の未来を読み解くための、革新的な科学論!

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。


カイエ・ソバージュ / 中沢 新一
カイエ・ソバージュ
  • 著者:中沢 新一
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(842ページ)
  • 発売日:2010-03-06
  • ISBN-10:4062159104
  • ISBN-13:978-4062159104

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。


宗教の起源――私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか / ロビン・ダンバー
宗教の起源――私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか
  • 著者:ロビン・ダンバー
  • 翻訳:小田哲
  • 出版社:白揚社
  • 装丁:単行本(352ページ)
  • 発売日:2023-10-03
  • ISBN-10:4826902484
  • ISBN-13:978-4826902489
内容紹介:
進化心理学の巨人ダンバーが描く、人類と信仰の20万年。仏教、キリスト教、ヒンドゥー教、神道……世界の主要な宗教は、なぜ同じ時期に同じ気候帯で誕生したのか?カルト宗教はなぜ次々と生まれ… もっと読む
進化心理学の巨人ダンバーが描く、人類と信仰の20万年。仏教、キリスト教、ヒンドゥー教、神道……世界の主要な宗教は、なぜ同じ時期に同じ気候帯で誕生したのか?カルト宗教はなぜ次々と生まれ、人々を惹きつけるのか?科学が隆盛を極める現代においても、宗教は衰えるどころかますます影響力を強めている。ときに国家間の戦争を引き起こすほど人々の心に深く根差した信仰心は、なぜ生まれたのか?そして、いかにして私たちが今日知る世界宗教へと進化したのか?「ダンバー数」で世界的に知られ、人類学のノーベル賞「トマス・ハクスリー記念賞」を受賞した著者が、人類学、心理学、神経科学など多彩な視点から「宗教とは何か」という根源的な問いに迫った、かつてないスケールの大著。待望の邦訳刊行。■ ■ ■集団内に協力行動を生みだす信仰心も、集団の外に対しては反社会的行動の原動力となる。宗教的アイデンティティが国家に利用されるとき、悲劇は起こる。――フィナンシャル・タイムズ紙宗教と人間の生活のあり方は、かくも複雑なのである。本書は、その両方を進化的ないきさつから説明しようと、真に大きな考察を展開しようと試みる大作である。――長谷川眞理子(進化生物学者、総合研究大学院大学名誉教授/「解説」より)■ ■ ■

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ

初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2023年12月16日

毎日新聞のニュース・情報サイト。事件や話題、経済や政治のニュース、スポーツや芸能、映画などのエンターテインメントの最新ニュースを掲載しています。

関連記事
ページトップへ