コラム
中村桂子「2023年 この3冊」毎日新聞|<1>西田洋平『人間非機械論 サイバネティクスが開く未来』(講談社選書メチエ)、<2>中沢新一『カイエ・ソバージュ[完全版]』(講談社選書メチエ)、<3>ロビン・ダンバー『宗教の起源 私たちにはなぜ<神>が必要だったのか(白揚社)
2023年「この3冊」
<1>西田洋平『人間非機械論 サイバネティクスが開く未来』(講談社選書メチエ)
<2>中沢新一『カイエ・ソバージュ[完全版]』(講談社選書メチエ)
<3>ロビン・ダンバー『宗教の起源 私たちにはなぜ<神>が必要だったのか(白揚社)
この道を進み続けて大丈夫なのだろうか。のんびり屋を自認しながらも、猛暑の中で戦争、虐待、差別など人間とは何かを考えずにはおられず選んだ三冊だ。<1>生成AIで会議用文書を作成し、AIが人間を超えると言う人々の多い中で、人間(生物)と機械を峻別(しゅんべつ)するサイバネティック・パラダイムを示す。ここから構築される情報学に期待する。
<2>形而上(けいじじょう)学化された人間の思考に対し、対称性の論理で作動する流動的知性を呼び戻す「対称性人類学」は魅力だ。権力、格差などの言葉に疲れているので。
<3>宗教も考えざるを得ない。社会脳や相手の心を想像するメンタライジングなど進化心理学の立場から、信仰心が生まれ世界宗教になる過程を解く。ここからなぜ戦争が生まれるのだろう。