日本群島とは聞きなれないが、わが国には一万四〇〇〇以上の島があるというから、相応しい言葉かもしれない。ややもすれば「自律的かつ完全に内発的であり、単独で孤立した本質を持つもの」と考えがちだが、この一国国粋主義的な性向は捨てなければならない。日本群島の文明としての生き残りは、大陸文明に対して「開放」と「閉鎖」のなかでゆれ動いており、交互にやってくるのが自然であるという。
本書を通読して思うのは、物事を根源的に考えるという思考の基本である。すべてを疑えと言うわけではないが、もともとに立ち返って考え直してみるという姿勢である。周りとの関係で考えるべきだと唱えながら、大多数の日本人は現実には自らに閉じこもっているにすぎない。とくに最も隣国の「朝鮮・韓国との比較」となると、嘆かわしくなる。知的世界の自立などおこがましい。
日本では、近代以後の朝鮮蔑視がしみついており、リベラルな知識人すら隣国を直視しない。著者は東アジアにおける朝鮮・韓国の思想・文化を考察する研究者であり、耳が痛いだけに、日本群島の「文明」史を根底から反省する絶好の機会になるだろう。