書評

『日本群島文明史』(筑摩書房)

  • 2025/08/19
日本群島文明史 / 小倉 紀蔵
日本群島文明史
  • 著者:小倉 紀蔵
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:新書(512ページ)
  • 発売日:2025-06-11
  • ISBN-10:4480076956
  • ISBN-13:978-4480076953
内容紹介:
「文明」概念でこの国を総合的に理解する画期的な知的世界全図日本は群島であり、日本文明は群島文明である。大陸文明的な実体系思考よりも群島文明的な非実体系思考が優勢で、そうした世界… もっと読む
「文明」概念でこの国を総合的に理解する画期的な知的世界全図

日本は群島であり、日本文明は群島文明である。大陸文明的な実体系思考よりも群島文明的な非実体系思考が優勢で、そうした世界観から生命は偶発的なものという感覚や共同主観の構造、革新性をもたらす美意識などが展開され、日本文明が創り出されてきたのだ。そうした日本の歴史的動態を描きつつ、日本の群島文明を形成する東アジアの哲学を「通底哲学」として世界哲学の中に置き直し、より深い文明論として展開する。日本の知の歴史を総合的に理解する、著者独自の日本思想大全。

【目次】
序 章 文明とはなにか
1 道具箱――準備作業のために
2 文明と未開の関係性
3 三つの存在様態

第一章 日本は群島である
1 群島としての日本
2 群島には文明はない
3 群島にも文明があるのか
4 東西のつながり
5 南北のつながり

第二章 日本群島史の時代区分
1 日本群島史の時代区分論
2 土着閉鎖系文明I期――縄文時代(紀元前14000年~紀元前8世紀ころ)
3 大陸開放系文明I期――弥生時代(紀元前8世紀~3世紀ころ)
4 土着閉鎖系・大陸開放系文明混合期――ヤマト政権、古墳時代(3~6世紀後半ころ)
5 大陸開放系文明II期――飛鳥、奈良、平安時代初期(600~900ころ)
6 土着閉鎖系文明II期――平安、鎌倉時代(900~1300ころ)
7 大陸開放系文明III期――室町、安土桃山、江戸時代初期(1300~1650ころ)
8 土着閉鎖系文明III期――寛永以降の江戸時代(1650~1860ころ)
9 大陸開放系文明IV期――明治、大正、昭和、平成、令和時代(1860~2020ころ)

第三章 日本群島と文明のあいだ
1 日本群島には《一》がなかった
2 日本群島には《人間》がいなかった
3 日本群島には要素還元主義がなかった
4 日本群島には善悪がなかった
5 日本群島には歴史がなかった
6 日本群島ではなぜ文学が盛んだったのか

第四章 日本群島の生命と人間
1 アニマシズムという群島的生命感覚
2 非実体系の存在様態
3 非実体系の「かみ」
4 「ことだま」と「ことのは」の対立
5 死のアニマシー

第五章 性のアニマシー
1 《文明》と性
2 なぜ日本群島では〈女系いのち〉が生き残ったのか
3 最初に自我を獲得したのは女性だった
4 〈女系いのち〉の日本群島文明
5 CGPという文明運動
6 女の衰退、〈女系いのち〉の生存戦略

第六章 美のアニマシー
1 反逆は美的生命から
2 「あはれ」「をかし」「あっぱれ」

終 章 トランス東アジア哲学のなかの日本群島
1 日本群島には哲学がなかった
2 通底哲学・非通底哲学とはなにか
3 トランス東アジアの儒学史
4 日本儒学の非通底性と東アジア
5 トランス東アジアのなかの日本仏教

日本群島文明史を思索するための入門的ブックガイド
あとがき
日本群島とは聞きなれないが、わが国には一万四〇〇〇以上の島があるというから、相応しい言葉かもしれない。ややもすれば「自律的かつ完全に内発的であり、単独で孤立した本質を持つもの」と考えがちだが、この一国国粋主義的な性向は捨てなければならない。日本群島の文明としての生き残りは、大陸文明に対して「開放」と「閉鎖」のなかでゆれ動いており、交互にやってくるのが自然であるという。

本書を通読して思うのは、物事を根源的に考えるという思考の基本である。すべてを疑えと言うわけではないが、もともとに立ち返って考え直してみるという姿勢である。周りとの関係で考えるべきだと唱えながら、大多数の日本人は現実には自らに閉じこもっているにすぎない。とくに最も隣国の「朝鮮・韓国との比較」となると、嘆かわしくなる。知的世界の自立などおこがましい。

日本では、近代以後の朝鮮蔑視がしみついており、リベラルな知識人すら隣国を直視しない。著者は東アジアにおける朝鮮・韓国の思想・文化を考察する研究者であり、耳が痛いだけに、日本群島の「文明」史を根底から反省する絶好の機会になるだろう。
日本群島文明史 / 小倉 紀蔵
日本群島文明史
  • 著者:小倉 紀蔵
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:新書(512ページ)
  • 発売日:2025-06-11
  • ISBN-10:4480076956
  • ISBN-13:978-4480076953
内容紹介:
「文明」概念でこの国を総合的に理解する画期的な知的世界全図日本は群島であり、日本文明は群島文明である。大陸文明的な実体系思考よりも群島文明的な非実体系思考が優勢で、そうした世界… もっと読む
「文明」概念でこの国を総合的に理解する画期的な知的世界全図

日本は群島であり、日本文明は群島文明である。大陸文明的な実体系思考よりも群島文明的な非実体系思考が優勢で、そうした世界観から生命は偶発的なものという感覚や共同主観の構造、革新性をもたらす美意識などが展開され、日本文明が創り出されてきたのだ。そうした日本の歴史的動態を描きつつ、日本の群島文明を形成する東アジアの哲学を「通底哲学」として世界哲学の中に置き直し、より深い文明論として展開する。日本の知の歴史を総合的に理解する、著者独自の日本思想大全。

【目次】
序 章 文明とはなにか
1 道具箱――準備作業のために
2 文明と未開の関係性
3 三つの存在様態

第一章 日本は群島である
1 群島としての日本
2 群島には文明はない
3 群島にも文明があるのか
4 東西のつながり
5 南北のつながり

第二章 日本群島史の時代区分
1 日本群島史の時代区分論
2 土着閉鎖系文明I期――縄文時代(紀元前14000年~紀元前8世紀ころ)
3 大陸開放系文明I期――弥生時代(紀元前8世紀~3世紀ころ)
4 土着閉鎖系・大陸開放系文明混合期――ヤマト政権、古墳時代(3~6世紀後半ころ)
5 大陸開放系文明II期――飛鳥、奈良、平安時代初期(600~900ころ)
6 土着閉鎖系文明II期――平安、鎌倉時代(900~1300ころ)
7 大陸開放系文明III期――室町、安土桃山、江戸時代初期(1300~1650ころ)
8 土着閉鎖系文明III期――寛永以降の江戸時代(1650~1860ころ)
9 大陸開放系文明IV期――明治、大正、昭和、平成、令和時代(1860~2020ころ)

第三章 日本群島と文明のあいだ
1 日本群島には《一》がなかった
2 日本群島には《人間》がいなかった
3 日本群島には要素還元主義がなかった
4 日本群島には善悪がなかった
5 日本群島には歴史がなかった
6 日本群島ではなぜ文学が盛んだったのか

第四章 日本群島の生命と人間
1 アニマシズムという群島的生命感覚
2 非実体系の存在様態
3 非実体系の「かみ」
4 「ことだま」と「ことのは」の対立
5 死のアニマシー

第五章 性のアニマシー
1 《文明》と性
2 なぜ日本群島では〈女系いのち〉が生き残ったのか
3 最初に自我を獲得したのは女性だった
4 〈女系いのち〉の日本群島文明
5 CGPという文明運動
6 女の衰退、〈女系いのち〉の生存戦略

第六章 美のアニマシー
1 反逆は美的生命から
2 「あはれ」「をかし」「あっぱれ」

終 章 トランス東アジア哲学のなかの日本群島
1 日本群島には哲学がなかった
2 通底哲学・非通底哲学とはなにか
3 トランス東アジアの儒学史
4 日本儒学の非通底性と東アジア
5 トランス東アジアのなかの日本仏教

日本群島文明史を思索するための入門的ブックガイド
あとがき

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年8月2日

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