書評

『ローマ帝国とアフリカ-カルタゴ滅亡からイスラーム台頭までの800年史』(中央公論新社)

  • 2025/10/28
ローマ帝国とアフリカ-カルタゴ滅亡からイスラーム台頭までの800年史 / 大清水 裕
ローマ帝国とアフリカ-カルタゴ滅亡からイスラーム台頭までの800年史
  • 著者:大清水 裕
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2025-08-21
  • ISBN-10:4121028716
  • ISBN-13:978-4121028716
内容紹介:
北アフリカを本拠とした強国カルタゴは、イタリア半島を統一した新興国ローマと争い、敗れて滅亡した。アフリカは属州とされたが、拡大する帝国の片隅で埋没したわけではない。穀倉地帯として… もっと読む
北アフリカを本拠とした強国カルタゴは、イタリア半島を統一した新興国ローマと争い、敗れて滅亡した。アフリカは属州とされたが、拡大する帝国の片隅で埋没したわけではない。穀倉地帯として経済的繁栄を遂げ、政治的影響力を強めて元老院議員を輩出した。二世紀末には初のアフリカ出身皇帝セプティミウス・セウェルスが登場する。「辺境」はローマ本国をどう変えたのか。地中海を挟む対岸から見た、新しいローマ帝国像。

序章 カルタゴの滅亡と北アフリカの人々
第一章 共和政期の属州アフリカ
第二章 カルタゴ再建とマウレタニア王国の興亡
第三章 属州民の見たローマ帝国
第四章 アフリカ系皇帝の時代
第五章 アフリカ教会とラテン語のキリスト教
第六章 古代末期のローマ人たち
終章 アフリカから見たローマ帝国
地中海の地図を広げると、左下の沿岸地域が北アフリカ。前二世紀半ばまで、この地の現チュニジアを中核にして覇権をふるったのが海洋大国カルタゴである。北アフリカは穀物栽培に適した地域であり、ローマ帝国支配下にあっても、首都ローマ一〇〇万人が食べる穀物の三分の二を供給できるほどだったという。現在と異なり、適度な降雨もあり、良好な土壌に恵まれていたらしい。その繁栄ぶりは三世紀ごろの大邸宅の一角に描かれた壮麗なモザイク画からも浮かび上がってくる。農作業や田園風景を彩る豊かさはまさしく「ローマの平和」を象徴するかのようである。

ローマ市民権保持者も元老院議員も増加し、五賢帝後の二世紀末には、とうとう北アフリカ出身の皇帝セプティミウス・セウェルスすら登場する。彼は威厳にあふれた顔立ちだったが、口にするラテン語からはアフリカ訛(なま)りが抜けなかったという。

さらに、古代末期には最大の教父アウグスティヌスも北アフリカ生まれであり、この地で生きていた。

地名から僻地(へきち)と思われがちだが、属州アフリカはローマ帝国を支える国力を備えていたことを思い起こさせる好著。
ローマ帝国とアフリカ-カルタゴ滅亡からイスラーム台頭までの800年史 / 大清水 裕
ローマ帝国とアフリカ-カルタゴ滅亡からイスラーム台頭までの800年史
  • 著者:大清水 裕
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2025-08-21
  • ISBN-10:4121028716
  • ISBN-13:978-4121028716
内容紹介:
北アフリカを本拠とした強国カルタゴは、イタリア半島を統一した新興国ローマと争い、敗れて滅亡した。アフリカは属州とされたが、拡大する帝国の片隅で埋没したわけではない。穀倉地帯として… もっと読む
北アフリカを本拠とした強国カルタゴは、イタリア半島を統一した新興国ローマと争い、敗れて滅亡した。アフリカは属州とされたが、拡大する帝国の片隅で埋没したわけではない。穀倉地帯として経済的繁栄を遂げ、政治的影響力を強めて元老院議員を輩出した。二世紀末には初のアフリカ出身皇帝セプティミウス・セウェルスが登場する。「辺境」はローマ本国をどう変えたのか。地中海を挟む対岸から見た、新しいローマ帝国像。

序章 カルタゴの滅亡と北アフリカの人々
第一章 共和政期の属州アフリカ
第二章 カルタゴ再建とマウレタニア王国の興亡
第三章 属州民の見たローマ帝国
第四章 アフリカ系皇帝の時代
第五章 アフリカ教会とラテン語のキリスト教
第六章 古代末期のローマ人たち
終章 アフリカから見たローマ帝国

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年10月18日

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