書評

『一つの市民権と二つの祖国: ローマ共和政下イタリアの市民たち』(京都大学学術出版会)

  • 2024/10/08
一つの市民権と二つの祖国: ローマ共和政下イタリアの市民たち / 毛利 晶
一つの市民権と二つの祖国: ローマ共和政下イタリアの市民たち
  • 著者:毛利 晶
  • 出版社:京都大学学術出版会
  • 装丁:単行本(401ページ)
  • 発売日:2022-01-31
  • ISBN-10:4814003765
  • ISBN-13:978-4814003761
内容紹介:
前4世紀半ばよりローマはイタリアの諸民族を支配下に収め半島に帝国支配を構築するが、その道は平坦ではなかった。イタリア支配の鍵を自治都市と投票権なき市民権に求め、限られた史料をもとに… もっと読む
前4世紀半ばよりローマはイタリアの諸民族を支配下に収め半島に帝国支配を構築するが、その道は平坦ではなかった。イタリア支配の鍵を自治都市と投票権なき市民権に求め、限られた史料をもとに帝国の原型が形成される過程を追う。

目次
イタリアとローマ
第1部(ムーニキピウムとムーニキペースの起源;投票権なき市民権(civitas sine suffragio)の起源)
第2部(ローマ市民権とケーンスス(戸口調査)
ガーイウス・グラックスの改革とイタリアの同盟市
ガーイウス・グラックス以降の不法取得返還請求法)
新聞の書評欄に学術書はなじまない。しかし、知の最先端を歩む研究の残り香だけでも嗅いでおくのも、ときには悪くない。すでに五〇年以上にわたってローマ史研究の先陣を切ってきた著者の業績は貴重である。

紀元前四世紀以降の「ローマのイタリア支配」と一口に言っても、多くの地方住民は生まれ育った土地で一生を過ごしていたにすぎない。彼らが運よくローマ市民権を得てローマ人になったとしても、土着の伝統に根ざす地元意識との折り合いはどうであったのだろうか。まずもってイタリアの諸民族を服属させ、この半島で帝国にいたる支配を構築しなければならないのだ。そのイタリア支配の要点は「自治都市」と「投票権なき市民権」に求めることができるという立場から、法学史料・文献史料・碑文史料などの詳細を渉猟して、解読・解釈する作業が延々とつづく。

たとえば、市民権の不法取得返還請求法の実態を文献と碑文の断片から復元するのは苦行である。このように史料は限られているが、その経過をたどりながら帝国の原形を浮かび上がらせようとする。「二つの祖国」とは現代にも実感できる迫真さがある。
一つの市民権と二つの祖国: ローマ共和政下イタリアの市民たち / 毛利 晶
一つの市民権と二つの祖国: ローマ共和政下イタリアの市民たち
  • 著者:毛利 晶
  • 出版社:京都大学学術出版会
  • 装丁:単行本(401ページ)
  • 発売日:2022-01-31
  • ISBN-10:4814003765
  • ISBN-13:978-4814003761
内容紹介:
前4世紀半ばよりローマはイタリアの諸民族を支配下に収め半島に帝国支配を構築するが、その道は平坦ではなかった。イタリア支配の鍵を自治都市と投票権なき市民権に求め、限られた史料をもとに… もっと読む
前4世紀半ばよりローマはイタリアの諸民族を支配下に収め半島に帝国支配を構築するが、その道は平坦ではなかった。イタリア支配の鍵を自治都市と投票権なき市民権に求め、限られた史料をもとに帝国の原型が形成される過程を追う。

目次
イタリアとローマ
第1部(ムーニキピウムとムーニキペースの起源;投票権なき市民権(civitas sine suffragio)の起源)
第2部(ローマ市民権とケーンスス(戸口調査)
ガーイウス・グラックスの改革とイタリアの同盟市
ガーイウス・グラックス以降の不法取得返還請求法)

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2022年2月26日

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