書評
『父の四千冊 アイスランドのアーティストによる回想』(作品社)
死者の蔵書を整理することも、弔(とむら)いのひとつだろう。「読むな」というのは大量の本を処分するときの鉄則だが、そこでは例外だ。
父が亡くなって8年。ひとりで暮らしていた母が引っ越すことになり、著者と弟は父の書斎を片づける。小さな出版社を営んでいた父にはたくさんの蔵書があった。父の本を開くと、過去がよみがえる。本や読書についての思いもつのる。アイスランドの出版事情も日本と同様らしい。
父の蔵書からの引用と思われる文章が頻繁に挿入される。アイスランドの人びとによる民話や年代記をまとめた一群の本からの引用が、ユーモラスでいい味を出している。たとえば<誰もが自分自身の夢に一目置いていた>なんて。
ぼくがグッときたのは、父の両親が父の誕生日に贈った本について。見返しに「オウリへ。母さんと父さんより」と日付とともに書かれた十数冊の本は、どれも新刊ではなかったという。ふさわしい本を探して古書にたどり着いたのだろう。
父が亡くなって8年。ひとりで暮らしていた母が引っ越すことになり、著者と弟は父の書斎を片づける。小さな出版社を営んでいた父にはたくさんの蔵書があった。父の本を開くと、過去がよみがえる。本や読書についての思いもつのる。アイスランドの出版事情も日本と同様らしい。
父の蔵書からの引用と思われる文章が頻繁に挿入される。アイスランドの人びとによる民話や年代記をまとめた一群の本からの引用が、ユーモラスでいい味を出している。たとえば<誰もが自分自身の夢に一目置いていた>なんて。
ぼくがグッときたのは、父の両親が父の誕生日に贈った本について。見返しに「オウリへ。母さんと父さんより」と日付とともに書かれた十数冊の本は、どれも新刊ではなかったという。ふさわしい本を探して古書にたどり着いたのだろう。
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