書評

『父の四千冊 アイスランドのアーティストによる回想』(作品社)

  • 2025/12/05
父の四千冊 アイスランドのアーティストによる回想 / ラグナル・ヘルギ・オウラフソン
父の四千冊 アイスランドのアーティストによる回想
  • 著者:ラグナル・ヘルギ・オウラフソン
  • 翻訳:小林 玲子
  • 出版社:作品社
  • 装丁:単行本(250ページ)
  • 発売日:2025-07-02
  • ISBN-10:4867930970
  • ISBN-13:978-4867930977
内容紹介:
父が他界して八年、遺された四千冊の蔵書アイスランドのアーティストである著者が、父の遺した大量の蔵書と向き合う日々を綴った、書物と喪失をめぐるメモワール。 出版社を経営していた父… もっと読む
父が他界して八年、遺された四千冊の蔵書

アイスランドのアーティストである著者が、父の遺した大量の蔵書と向き合う日々を綴った、書物と喪失をめぐるメモワール。

出版社を経営していた父親が他界して八年。著者は、父の蔵書四千冊の整理という一大事業にようやく手をつけた。父親が蒐集していたアイスランドの名もなき人びとによる膨大な記録の書を読み、人びとの電車の中での過ごし方を観察し、レイキャヴィークのレストランで「半分」にされた本に困惑する。大量の蔵書と向き合う日々は、やがて著者を思わぬところへと連れていく──。
何かを残すこと、そして喪うことを中心に自由に思考を繰り広げた、詩的で深みある一冊。二〇一八年アイスランド文学賞ノンフィクション部門ノミネート。

「幸福感と冷感。こういった本には初めて出会う。美と混乱、悲しみ、死、再生に満ちている。書物と詩人〔=著者〕の父親に捧げるレクイエムだ」
――ラグナル・キャルタンソン(現代アーティスト)

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【目次】
1 喪われた書物を求めて──スケーヴィルズスタージル地域の海と陸の死者たちの記録、一八〇〇~一九五〇年
2 記憶の図書館──ビョルン・エイステインソン自伝
3 書物と偶然──ソイズアウルクロウクル・ディベートクラブ
4 書物と別れる──アイスランドの年代紀および新たな歴史の一葉
5 本のない時代の訪れを前に──墓の彼方の回想
6 旅の終わりの音楽
エピローグ 今日の陽は輝き
訳者あとがき
英語版訳者による注
参考文献
死者の蔵書を整理することも、弔(とむら)いのひとつだろう。「読むな」というのは大量の本を処分するときの鉄則だが、そこでは例外だ。

父が亡くなって8年。ひとりで暮らしていた母が引っ越すことになり、著者と弟は父の書斎を片づける。小さな出版社を営んでいた父にはたくさんの蔵書があった。父の本を開くと、過去がよみがえる。本や読書についての思いもつのる。アイスランドの出版事情も日本と同様らしい。

父の蔵書からの引用と思われる文章が頻繁に挿入される。アイスランドの人びとによる民話や年代記をまとめた一群の本からの引用が、ユーモラスでいい味を出している。たとえば<誰もが自分自身の夢に一目置いていた>なんて。

ぼくがグッときたのは、父の両親が父の誕生日に贈った本について。見返しに「オウリへ。母さんと父さんより」と日付とともに書かれた十数冊の本は、どれも新刊ではなかったという。ふさわしい本を探して古書にたどり着いたのだろう。
父の四千冊 アイスランドのアーティストによる回想 / ラグナル・ヘルギ・オウラフソン
父の四千冊 アイスランドのアーティストによる回想
  • 著者:ラグナル・ヘルギ・オウラフソン
  • 翻訳:小林 玲子
  • 出版社:作品社
  • 装丁:単行本(250ページ)
  • 発売日:2025-07-02
  • ISBN-10:4867930970
  • ISBN-13:978-4867930977
内容紹介:
父が他界して八年、遺された四千冊の蔵書アイスランドのアーティストである著者が、父の遺した大量の蔵書と向き合う日々を綴った、書物と喪失をめぐるメモワール。 出版社を経営していた父… もっと読む
父が他界して八年、遺された四千冊の蔵書

アイスランドのアーティストである著者が、父の遺した大量の蔵書と向き合う日々を綴った、書物と喪失をめぐるメモワール。

出版社を経営していた父親が他界して八年。著者は、父の蔵書四千冊の整理という一大事業にようやく手をつけた。父親が蒐集していたアイスランドの名もなき人びとによる膨大な記録の書を読み、人びとの電車の中での過ごし方を観察し、レイキャヴィークのレストランで「半分」にされた本に困惑する。大量の蔵書と向き合う日々は、やがて著者を思わぬところへと連れていく──。
何かを残すこと、そして喪うことを中心に自由に思考を繰り広げた、詩的で深みある一冊。二〇一八年アイスランド文学賞ノンフィクション部門ノミネート。

「幸福感と冷感。こういった本には初めて出会う。美と混乱、悲しみ、死、再生に満ちている。書物と詩人〔=著者〕の父親に捧げるレクイエムだ」
――ラグナル・キャルタンソン(現代アーティスト)

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【目次】
1 喪われた書物を求めて──スケーヴィルズスタージル地域の海と陸の死者たちの記録、一八〇〇~一九五〇年
2 記憶の図書館──ビョルン・エイステインソン自伝
3 書物と偶然──ソイズアウルクロウクル・ディベートクラブ
4 書物と別れる──アイスランドの年代紀および新たな歴史の一葉
5 本のない時代の訪れを前に──墓の彼方の回想
6 旅の終わりの音楽
エピローグ 今日の陽は輝き
訳者あとがき
英語版訳者による注
参考文献

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年11月29日

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