書評

『日本印刷文化史』(講談社)

  • 2024/12/31
日本印刷文化史 / 印刷博物館
日本印刷文化史
  • 著者:印刷博物館
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(346ページ)
  • 発売日:2020-10-09
  • ISBN-10:4065204526
  • ISBN-13:978-4065204528
内容紹介:
日本において「印刷」は、社会に、文化にどのような役割を果たしてきたのか。最古の現存印刷と言われる、『続日本紀』にも記された法隆寺の「百万塔陀羅尼」(770)から始まり、木版、金属による… もっと読む
日本において「印刷」は、社会に、文化にどのような役割を果たしてきたのか。最古の現存印刷と言われる、『続日本紀』にも記された法隆寺の「百万塔陀羅尼」(770)から始まり、木版、金属による活版、写真植字機の誕生、現代のコンピューター組版まで、1200年を超えて発展し続ける印刷の歴史を、個人の趣味・鑑賞から出版業の誕生、マスコミへの発展、行政・教育・学術に果たした役割を通し、技術の変遷・発展とともに体系立てて振り返る。印刷博物館創設20周年記念出版。

序論――学としての印刷文化を目指して
1部 古代
1章 奈良時代に始まった日本の印刷
2章 平安時代の印刷――ミッシング・リンク、宋版輸入、仏教版画

2部 中世
3章 鎌倉時代の印刷――本格化する寺院の開版
4章 五山版と武士による印刷の広がり

3部 近世
5章 朝鮮出兵――朝鮮伝来活字はなにをもたらしたか
6章 徳川家康を中心とする印刷・出版合戦
7章 嵯峨本と近世木活字版
8章 京都・大坂・江戸 三都出版物語
9章 印刷が広げた江戸時代の行動文化――旅を助けた書物、版画、摺り物
10章 諸学の発展と教育の広がり
11章 学問の進展と印刷――本草学から植物学へ
12章 鎖国と行列――オランダ、朝鮮、琉球、アイヌ
13章 改暦と印刷
14章 江戸の三大改革と印刷――為政者と庶民の関係から

4部 近代
15章 開国から明治維新へ――新時代のイメージを広げた図版印刷
16章 戊辰戦争、そして明治政府による改革へ――幕末明治の活字文化
17章 「描く技術」を伝える
18章 資本主義社会と大衆文化の成立――大正時代の印刷
19章 戦時における印刷の功罪

5部 現代
20章 高度経済成長と素材のバリエーション
21章 大量消費社会と印刷――効率化と標準化の時代
22章 日本の図書館の歴史

コラム「天正少年使節は木製印刷機をはこぶ」「和装本から洋装本へ」ほか
印刷のワザとモノ――日本印刷史の基礎知識――
二千年紀一〇〇〇年間での最大の発明は何かと問えば、グーテンベルクの活版印刷だという声が高い。

だが、日本ではすでに奈良時代から、称徳天皇の発願による「百万塔陀羅尼」が印刷されている。平安時代には貴族が印刷に関わっており、武士の時代になると数百年は印刷の主役は寺院だった。大方は木版印刷であり、活版印刷が日本にもたらされたのは江戸時代直前だった。

ところで、安定した幕藩体制のもとに読書人口が増えると、活版印刷では書物の需要に応えきれなくなり、再版に有利な木版印刷があらためて盛んになったというから、皮肉である。京都・大坂・江戸を中心に印刷・出版の産業が生まれ、学芸や大衆向けの読み物が拡がったという。

『好色一代男』が飛ぶように売れ、『雨月物語』『南総里見八犬伝』などの読本も多くの庶民たちに親しまれたが、その背景には貸本屋が拡がっていたことも特筆される。

活版印刷が本格的に定着するのは、明治政府の近代国家づくりに従うもの。世界史のなかで異彩をはなつ日本の印刷文化は今なお注目され、そこに「印刷文化学」が生まれる素地がある。
日本印刷文化史 / 印刷博物館
日本印刷文化史
  • 著者:印刷博物館
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(346ページ)
  • 発売日:2020-10-09
  • ISBN-10:4065204526
  • ISBN-13:978-4065204528
内容紹介:
日本において「印刷」は、社会に、文化にどのような役割を果たしてきたのか。最古の現存印刷と言われる、『続日本紀』にも記された法隆寺の「百万塔陀羅尼」(770)から始まり、木版、金属による… もっと読む
日本において「印刷」は、社会に、文化にどのような役割を果たしてきたのか。最古の現存印刷と言われる、『続日本紀』にも記された法隆寺の「百万塔陀羅尼」(770)から始まり、木版、金属による活版、写真植字機の誕生、現代のコンピューター組版まで、1200年を超えて発展し続ける印刷の歴史を、個人の趣味・鑑賞から出版業の誕生、マスコミへの発展、行政・教育・学術に果たした役割を通し、技術の変遷・発展とともに体系立てて振り返る。印刷博物館創設20周年記念出版。

序論――学としての印刷文化を目指して
1部 古代
1章 奈良時代に始まった日本の印刷
2章 平安時代の印刷――ミッシング・リンク、宋版輸入、仏教版画

2部 中世
3章 鎌倉時代の印刷――本格化する寺院の開版
4章 五山版と武士による印刷の広がり

3部 近世
5章 朝鮮出兵――朝鮮伝来活字はなにをもたらしたか
6章 徳川家康を中心とする印刷・出版合戦
7章 嵯峨本と近世木活字版
8章 京都・大坂・江戸 三都出版物語
9章 印刷が広げた江戸時代の行動文化――旅を助けた書物、版画、摺り物
10章 諸学の発展と教育の広がり
11章 学問の進展と印刷――本草学から植物学へ
12章 鎖国と行列――オランダ、朝鮮、琉球、アイヌ
13章 改暦と印刷
14章 江戸の三大改革と印刷――為政者と庶民の関係から

4部 近代
15章 開国から明治維新へ――新時代のイメージを広げた図版印刷
16章 戊辰戦争、そして明治政府による改革へ――幕末明治の活字文化
17章 「描く技術」を伝える
18章 資本主義社会と大衆文化の成立――大正時代の印刷
19章 戦時における印刷の功罪

5部 現代
20章 高度経済成長と素材のバリエーション
21章 大量消費社会と印刷――効率化と標準化の時代
22章 日本の図書館の歴史

コラム「天正少年使節は木製印刷機をはこぶ」「和装本から洋装本へ」ほか
印刷のワザとモノ――日本印刷史の基礎知識――

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2021年1月30日

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