書評
『石原家の兄弟』(新潮社)
石原裕次郎主演『嵐を呼ぶ男』を満員の映画館で観た。そのころ、慎太郎はその兄にすぎなかった。だが、兄は健筆家であるばかりか、国会議員にもなり、東京都知事としても活躍した。4人の息子に恵まれ、今や精悍(せいかん)な中年男たち、その雑感集だ。
長男伸晃は、小学卒業文集の「将来の夢」に「政治家」と書いた。三〇一万票を得て参議院議員になった父親が頼もしかったらしい。それに太平洋横断のヨットレースにも参加している。次男良純は、大学の卒業アルバムの就職欄に「西部警察」と記されている。だが、多忙な父親の本性が作家であることを見抜いているのはさすがだ。三男宏高は、銀行マンとして重なる通貨危機を経験しながら、「人のために働く」政治家になった。自分の信念を重んじた父親が敬愛すべき男だったのだろう。四男延啓は、父親の野望のごとく画家になったが、それはあくまで人との関わりであり、同化して作品を創作するのが自分の性分だったからだ。
ともあれ、仲良し四人兄弟の背景には父親のわがままを生涯優しくつつんでいた母典子がいたことが痛感される。
長男伸晃は、小学卒業文集の「将来の夢」に「政治家」と書いた。三〇一万票を得て参議院議員になった父親が頼もしかったらしい。それに太平洋横断のヨットレースにも参加している。次男良純は、大学の卒業アルバムの就職欄に「西部警察」と記されている。だが、多忙な父親の本性が作家であることを見抜いているのはさすがだ。三男宏高は、銀行マンとして重なる通貨危機を経験しながら、「人のために働く」政治家になった。自分の信念を重んじた父親が敬愛すべき男だったのだろう。四男延啓は、父親の野望のごとく画家になったが、それはあくまで人との関わりであり、同化して作品を創作するのが自分の性分だったからだ。
ともあれ、仲良し四人兄弟の背景には父親のわがままを生涯優しくつつんでいた母典子がいたことが痛感される。
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