書評

『リベラルアーツと外国語』(水声社)

  • 2024/09/24
リベラルアーツと外国語 / 石井 洋二郎(編集)
リベラルアーツと外国語
  • 著者:石井 洋二郎(編集)
  • 出版社:水声社
  • 装丁:単行本(283ページ)
  • 発売日:2022-02-14
  • ISBN-10:4801006264
  • ISBN-13:978-4801006263
内容紹介:
「役に立つ外国語」から、「他者理解の想像力」へ――外国語教育はなぜ必要なのか? 言語教育にたずさわる3名によるシンポジウムと、9名による識者の論考から考える。コミュニケーションのため… もっと読む
「役に立つ外国語」から、「他者理解の想像力」へ――
外国語教育はなぜ必要なのか? 言語教育にたずさわる3名によるシンポジウムと、9名による識者の論考から考える。コミュニケーションのための外国語から、リベラルアーツとしての外国語に至るための第一歩。前著『21世紀のリベラルアーツ』につづく、「創造的リベラルアーツ」の第2弾。

はじめに(石井洋二郎)

【シンポジウム】
リベラルアーツと外国語
鳥飼玖美子/小倉紀蔵/ロバート キャンベル/【司会】石井洋二郎


リベラルアーツと語学教育と自由間接話法(阿部公彦)
自由になるためのリベラルアーツ(佐藤嘉倫)
記者にとっての外国語――自分と読者の社会を相対化する視点として(大野博人)
言葉のネットワークを往復するということ(藤垣裕子)
橋をかけるリベラルアーツ――他者と共に飛び立つための外国語(鈴木順子)
「私」はどこにいるのか(細田衛士)
森鷗外の訳詩からリベラルアーツを問う(坂井修一)
外国語は存在している(國分功一郎)
詩という謎語をめぐって――機械翻訳の時代におけるリベラルアーツとしての言語教育(田中純)

倫理としての想像力――「あとがき」に代えて(石井洋二郎)
リベラルアーツはしばしば「一般教養」と訳される。とはいえ、20世紀末からバブル崩壊後の経済の逼迫のなかで、実践力や即戦力が求められ、劣勢に追いこまれていた。だが、このところ「教養」を見直す機運もあり、昨年、中部大学では「創造的リベラルアーツセンター」が設立され、シンポジウムが開催された。

パネリストの鳥飼玖美子は欧州評議会の用いる「複言語主義」を頼りに、英語教育だけに走りがちな世の中に警鐘をならす。韓国ドラマ、映画を字幕翻訳で見ているだけで、異質性と対話できるという。

小倉紀蔵は「自己同一性」と訳されるアイデンティティは韓国語では「正体性」という訳語になると指摘する。隣国との相互理解をめざすリベラルアーツは、「正義」よりも「尊厳」を学ぶべきだという。

日本語が第三外国語だというロバート・キャンベルは、パブリック・ヒューマニティーズに注目する。黒人差別の犠牲者やホームレスの路上死亡者をメモリーとして共有することも外国語学習の大事な滋養になる。

テーマにそう寄稿もあり、21世紀に相応しいリベラルアーツへの熱意を感じる。
リベラルアーツと外国語 / 石井 洋二郎(編集)
リベラルアーツと外国語
  • 著者:石井 洋二郎(編集)
  • 出版社:水声社
  • 装丁:単行本(283ページ)
  • 発売日:2022-02-14
  • ISBN-10:4801006264
  • ISBN-13:978-4801006263
内容紹介:
「役に立つ外国語」から、「他者理解の想像力」へ――外国語教育はなぜ必要なのか? 言語教育にたずさわる3名によるシンポジウムと、9名による識者の論考から考える。コミュニケーションのため… もっと読む
「役に立つ外国語」から、「他者理解の想像力」へ――
外国語教育はなぜ必要なのか? 言語教育にたずさわる3名によるシンポジウムと、9名による識者の論考から考える。コミュニケーションのための外国語から、リベラルアーツとしての外国語に至るための第一歩。前著『21世紀のリベラルアーツ』につづく、「創造的リベラルアーツ」の第2弾。

はじめに(石井洋二郎)

【シンポジウム】
リベラルアーツと外国語
鳥飼玖美子/小倉紀蔵/ロバート キャンベル/【司会】石井洋二郎


リベラルアーツと語学教育と自由間接話法(阿部公彦)
自由になるためのリベラルアーツ(佐藤嘉倫)
記者にとっての外国語――自分と読者の社会を相対化する視点として(大野博人)
言葉のネットワークを往復するということ(藤垣裕子)
橋をかけるリベラルアーツ――他者と共に飛び立つための外国語(鈴木順子)
「私」はどこにいるのか(細田衛士)
森鷗外の訳詩からリベラルアーツを問う(坂井修一)
外国語は存在している(國分功一郎)
詩という謎語をめぐって――機械翻訳の時代におけるリベラルアーツとしての言語教育(田中純)

倫理としての想像力――「あとがき」に代えて(石井洋二郎)

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2022年6月11日

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