書評
『刑事コロンボとピーター・フォーク:その誕生から終幕まで』(原書房)
本国では一九七一年から二〇〇三年まで何期かに分かれて放映され、日本でも人気を博した「刑事コロンボ」には数多くの愛好者がいて、コロンボを演じたピーター・フォークのみならず、犯人や脇役、小道具に至るまで、個々のエピソードについてさまざまな研究がなされている。
一九八九年からの新シリーズも網羅した本書の強みは、番組制作に関与した人々への綿密な聴き取り取材に一次資料の調査を合わせ、ロサンゼルス警察殺人課の警部を中心とした愛すべき共同体が、じつはぎりぎりの均衡のうえに成り立つ修羅場であった事実を明かしたことだ。
現場での確執や覇権争いはもちろん、出演交渉の過程や良質な脚本の確保にかかわる苦労話が興味深い。「魔術師の幻想」(一九七六年)の殺人犯役の第一候補はオーソン・ウェルズだった。また脚本家のひとりに、スパイ小説家レン・デイトンの名も挙げられていたという。
複雑な人間関係の交錯とコロンボの終焉を語る頁には、近代文学史を読んでいるような味わいがある。
一九八九年からの新シリーズも網羅した本書の強みは、番組制作に関与した人々への綿密な聴き取り取材に一次資料の調査を合わせ、ロサンゼルス警察殺人課の警部を中心とした愛すべき共同体が、じつはぎりぎりの均衡のうえに成り立つ修羅場であった事実を明かしたことだ。
現場での確執や覇権争いはもちろん、出演交渉の過程や良質な脚本の確保にかかわる苦労話が興味深い。「魔術師の幻想」(一九七六年)の殺人犯役の第一候補はオーソン・ウェルズだった。また脚本家のひとりに、スパイ小説家レン・デイトンの名も挙げられていたという。
複雑な人間関係の交錯とコロンボの終焉を語る頁には、近代文学史を読んでいるような味わいがある。
ALL REVIEWSをフォローする








































