書評

『世間とズレちゃうのはしょうがない』(PHP研究所)

  • 2021/02/05
世間とズレちゃうのはしょうがない / 養老 孟司,伊集院 光
世間とズレちゃうのはしょうがない
  • 著者:養老 孟司,伊集院 光
  • 出版社:PHP研究所
  • 装丁:単行本(224ページ)
  • 発売日:2020-10-14
  • ISBN-10:4569843182
  • ISBN-13:978-4569843186
内容紹介:
世間からはじき出されないことを願う理論派伊集院光と、世間からはみ出している養老孟司が、世間との付き合い方、抜け出し方を語る。

しんどいんだからズレちゃえばいい

この対談本がどういう本かといえば、世間とズレちゃうのはしょうがない、という本だ。

そう、しょうがないのだ。しょうがないのに、生きていると、「少しは合わせろ」「そうじゃないだろ」などと、微調整や大胆な変更を強いられる。なぜか世間を背負っているつもりの人からあれこれ指図され、黙り込む。

世間とズレているという自覚を持つ二人だが、そのズレにはズレがある。伊集院は、ズレに怯(おび)えながらも「今はなんとか調整しつつ生きている」。養老は、「しょうがないと開き直って、開いた距離感で世間を冷静に見つめている」。

世間とズレていると、不安になる。その不安を察知されたくないから、闇雲(やみくも)に周囲と同調する。変化に動じないふりをし、「分かりません」がどんどん言い出しにくくなる。そして、何かと便利になればなるほど、その人間がどういう人間なのかが、隅っこに追いやられていく。

養老が、「『われわれ人間は何か』というと、もはやノイズなんですよ」という。いちいち意思を表明するよりも、記号として存在することが好まれる。「当の人間を外す」傾向が続いているのだから、「うちの猫に僕の健康保険証を持たせて行かせりゃいいんですよ」と笑う。

伊集院が、自分が企画を作るときのコツとして、「世の中で不便なものが便利になったときに、振り落とされたものは何か」を考える、をあげる。

最適化、効率化が進み、それが世間になると、合わせていくのがますます大変になる。こわばった笑顔で世間に調子を合わせてみても、やがて限界がくる。世間を突き詰めると、思うがままにふるまうことが一つずつ許されなくなる。合わせるのって、とってもしんどい。しょうがない、ズレちゃえばいいのだ。
世間とズレちゃうのはしょうがない / 養老 孟司,伊集院 光
世間とズレちゃうのはしょうがない
  • 著者:養老 孟司,伊集院 光
  • 出版社:PHP研究所
  • 装丁:単行本(224ページ)
  • 発売日:2020-10-14
  • ISBN-10:4569843182
  • ISBN-13:978-4569843186
内容紹介:
世間からはじき出されないことを願う理論派伊集院光と、世間からはみ出している養老孟司が、世間との付き合い方、抜け出し方を語る。

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初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2020年11月15日号

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