書評
『ぼくのことをたくさん話そう』(光文社)
ザヴァッティーニ(一九〇二-八九)は、イタリア映画不朽の名作「自転車泥棒」「ひまわり」などの脚本家として知られる。しかし、彼は文学やジャーナリズムなど、多岐にわたる分野で活躍した才人だった。本書は彼の最初の小説(一九三一年刊)である。刊行当時大きな話題となり、「ザヴァッティーニ事件」と騒がれたほどだったという。
ある日、「ぼく」は「あの世の旅にご招待したい」と申し出た霊とともに空に舞い上がり、世界の様々な場所を訪ね、ダンテの『神曲』の筋書きをなぞって煉獄(れんごく)から天国へと動いていく。幻想的な設定はさておき、むしろ「宇宙に浮かぶ惑星」のように各自が一つの世界をなす人間たちの営みから、次々と物語を引き出していく著者の優しくユーモアに満ちた手さばきがすばらしい。そうして、世界で繰り広げられる平凡な人々の愛と苦しみ、貧しさと幸せに光が当てられる。
文学と映画の両方に詳しい訳者の、原作への愛情が感じられる翻訳だ。本邦初訳。この素敵な佳品がまだ翻訳されていなかったのかと、驚いた。
ある日、「ぼく」は「あの世の旅にご招待したい」と申し出た霊とともに空に舞い上がり、世界の様々な場所を訪ね、ダンテの『神曲』の筋書きをなぞって煉獄(れんごく)から天国へと動いていく。幻想的な設定はさておき、むしろ「宇宙に浮かぶ惑星」のように各自が一つの世界をなす人間たちの営みから、次々と物語を引き出していく著者の優しくユーモアに満ちた手さばきがすばらしい。そうして、世界で繰り広げられる平凡な人々の愛と苦しみ、貧しさと幸せに光が当てられる。
文学と映画の両方に詳しい訳者の、原作への愛情が感じられる翻訳だ。本邦初訳。この素敵な佳品がまだ翻訳されていなかったのかと、驚いた。
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