人文系の論文・レポートの書き方を指南するマニュアル本である。主な対象は学生・大学院生、さらには駆け出しの研究者といったところだろうか。そのような本をあえてここに取り上げるのは、より広範な読者にとって有用な内容が含まれていると判断したからだ。
「まったく新しい」とは惹句にしてもずいぶん威勢がいいが、その意気やよし。著者はアメリカで博士号を取得、学会誌にばりばり論文を書き続ける少壮気鋭の研究者である。従来の類書の多くが、上から目線で年長の権威者が規則を一方的に伝授するスタイルだったのに対して、本書は、ちょっと年上の頼りになる「兄貴分」が一緒にトレーニングしてくれる、といった風だ。
価値ある「主張」の作り方、「段落」の構成法など、本書の大部分はアメリカ仕込みの実用的テクニックに関わるもので、日本の人文学につきまといがちな精神論から吹っ切れた爽快さがある。しかし、本書の最後では、人文学は何のために必要なのか、そもそもそれは人生とどう結びつくのか、といった根本問題が堂々と展開され、本書の射程の予想外の大きさを示している。