書評
『ピアノを尋ねて』(新潮社)
台湾の現代小説。「わたし」は幼いころ天才音楽家と呼ばれていたが、ピアニストへの夢は破れ、いまは調律師をしている。わたしは「林(リン)サン」と日本語で呼ばれる実業家と出会う。林サンは3カ月前に妻のエミリーを癌で亡くしたばかり。エミリーが経営する音楽教室のピアノを調律していたのがわたしだった。わたしと林サンの交遊が始まり、やがて共同でビジネスをするため2人はニューヨークに向かうのだが……。
ピアニストになれなかった中年男、20歳年下の妻と出会って音楽への関心を持つようになった初老の男、そして老いる前に死んでしまった音楽家の女性。3人の男女の老いと人生と音楽が語られる。要所要所に音楽が出てくる。ラフマニノフの「ヴォカリーズ」(のピアノ版)、リヒテルが弾くシューベルトの「ピアノソナタ18番」、グレン・グールドのバッハ「ゴルトベルク変奏曲」。ドビュッシーの「アラベスク」やリストの「ため息」も。ぼくはそのつど曲を聴きながら読んだ。巨匠たちの人生も重なって小説が立体的になる。音楽も人生も偶然が左右する。
ピアニストになれなかった中年男、20歳年下の妻と出会って音楽への関心を持つようになった初老の男、そして老いる前に死んでしまった音楽家の女性。3人の男女の老いと人生と音楽が語られる。要所要所に音楽が出てくる。ラフマニノフの「ヴォカリーズ」(のピアノ版)、リヒテルが弾くシューベルトの「ピアノソナタ18番」、グレン・グールドのバッハ「ゴルトベルク変奏曲」。ドビュッシーの「アラベスク」やリストの「ため息」も。ぼくはそのつど曲を聴きながら読んだ。巨匠たちの人生も重なって小説が立体的になる。音楽も人生も偶然が左右する。
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