書評

『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか: 知られざる戦後書店抗争史』(平凡社)

  • 2025/06/13
町の本屋はいかにしてつぶれてきたか: 知られざる戦後書店抗争史 / 飯田 一史
町の本屋はいかにしてつぶれてきたか: 知られざる戦後書店抗争史
  • 著者:飯田 一史
  • 出版社:平凡社
  • 装丁:新書(352ページ)
  • 発売日:2025-04-17
  • ISBN-10:4582860796
  • ISBN-13:978-4582860795
内容紹介:
かつて本屋は「帰り道にふらっと寄る」場所だった。だが、いつのまにか町から本屋の姿はなくなり、「わざわざ行く」場所になってしまっている。いったいいつから、どのようにして、本屋は消え… もっと読む
かつて本屋は「帰り道にふらっと寄る」場所だった。だが、いつのまにか町から本屋の姿はなくなり、「わざわざ行く」場所になってしまっている。いったいいつから、どのようにして、本屋は消えていったのか?
本書では、出版社・取次・書店をめぐる取引関係、定価販売といった出版流通の基本構造を整理した上で、戦後の書店が歩んだ闘争の歴史をテーマごとにたどる。
公正取引委員会との攻防、郊外型複合書店からモール内大型書店への移り変わり、鉄道会社系書店の登場、図書館での新刊書籍の貸出、ネット書店の台頭――。
膨大なデータの分析からは、書店が直面してきた苦境と、それに抗い続けた闘争の歴史が見えてくる。「書店がつぶれていく」という問題の根幹を明らかにする一冊。


《目次》
まえがき
第一章 日本の新刊書店のビジネスモデル
コラム1 本屋の動向と読書の動向は必ずしも一致しない
第二章 日本の出版流通の特徴
コラム2 書店の注文・取引方法あれこれ
第三章 闘争する「町の本屋」――運賃負担・正味・新規参入者との戦い
コラム3 見計らいの重視、予約と客注の軽視
第四章 本の定価販売をめぐる公正取引委員会との攻防
コラム4 返品条件付販売への切り替えはいつ起こり、いつ委託ではないと認識されたのか
第五章 外商(外売)
コラム5 取次からの請求への書店の入金率の変化と返品入帳問題
第六章 兼業書店
コラム6 信認金制度
第七章 スタンドと鉄道会社系書店
コラム7 出版物のPOSの精度を高めるのはなぜむずかしいのか
第八章 コンビニエンス・ストア
コラム8 書籍の客注と新刊予約注文の歴史
第九章 書店の多店舗化・大型化
コラム9 共同倉庫構想の挫折史
第十章 図書館、TRC(図書館流通センター)
コラム10「送料無料」と景表法規制
第十一章 ネット書店
コラム11 2020年代の「指定配本」の増加
終章
あとがき
これを読まずして書店について語ることなかれ、といいたくなるような快著。書店組合団体の刊行物をはじめさまざまな文献を渉猟して戦後の新刊書店の歩みをたどる。

最近よくいわれる「町の本屋の危機」は、じつはずうっと前から。駅売店、コンビニ、郊外型書店、大型書店、図書館、そしてネット書店と、ライバルが次々と登場し、町の本屋はそのつど戦いを強いられてきた。利益の少なさや仕入れの不自由さなど、町の本屋が解決を望んできたことは何十年もそのままだ。

「常識のウソ」が次々とひっくり返される。そのひとつが本の値段について。日本では新刊書の多くが定価(出版社が決めた値段)で売られる。メーカーによる価格拘束は独占禁止法で禁じられているが、書籍など著作物6品目については例外的に認められている。再販制(再販売価格維持制度)だ。「文化を守るため」と説明されることが多いが、本書によるとこれは「後付けのタテマエ」にすぎなく、再販制が認められた理由はあいまいだ。

自由な読書のために、本をめぐる環境はどうあるべきか。この本を読んでじっくり考えよう。
町の本屋はいかにしてつぶれてきたか: 知られざる戦後書店抗争史 / 飯田 一史
町の本屋はいかにしてつぶれてきたか: 知られざる戦後書店抗争史
  • 著者:飯田 一史
  • 出版社:平凡社
  • 装丁:新書(352ページ)
  • 発売日:2025-04-17
  • ISBN-10:4582860796
  • ISBN-13:978-4582860795
内容紹介:
かつて本屋は「帰り道にふらっと寄る」場所だった。だが、いつのまにか町から本屋の姿はなくなり、「わざわざ行く」場所になってしまっている。いったいいつから、どのようにして、本屋は消え… もっと読む
かつて本屋は「帰り道にふらっと寄る」場所だった。だが、いつのまにか町から本屋の姿はなくなり、「わざわざ行く」場所になってしまっている。いったいいつから、どのようにして、本屋は消えていったのか?
本書では、出版社・取次・書店をめぐる取引関係、定価販売といった出版流通の基本構造を整理した上で、戦後の書店が歩んだ闘争の歴史をテーマごとにたどる。
公正取引委員会との攻防、郊外型複合書店からモール内大型書店への移り変わり、鉄道会社系書店の登場、図書館での新刊書籍の貸出、ネット書店の台頭――。
膨大なデータの分析からは、書店が直面してきた苦境と、それに抗い続けた闘争の歴史が見えてくる。「書店がつぶれていく」という問題の根幹を明らかにする一冊。


《目次》
まえがき
第一章 日本の新刊書店のビジネスモデル
コラム1 本屋の動向と読書の動向は必ずしも一致しない
第二章 日本の出版流通の特徴
コラム2 書店の注文・取引方法あれこれ
第三章 闘争する「町の本屋」――運賃負担・正味・新規参入者との戦い
コラム3 見計らいの重視、予約と客注の軽視
第四章 本の定価販売をめぐる公正取引委員会との攻防
コラム4 返品条件付販売への切り替えはいつ起こり、いつ委託ではないと認識されたのか
第五章 外商(外売)
コラム5 取次からの請求への書店の入金率の変化と返品入帳問題
第六章 兼業書店
コラム6 信認金制度
第七章 スタンドと鉄道会社系書店
コラム7 出版物のPOSの精度を高めるのはなぜむずかしいのか
第八章 コンビニエンス・ストア
コラム8 書籍の客注と新刊予約注文の歴史
第九章 書店の多店舗化・大型化
コラム9 共同倉庫構想の挫折史
第十章 図書館、TRC(図書館流通センター)
コラム10「送料無料」と景表法規制
第十一章 ネット書店
コラム11 2020年代の「指定配本」の増加
終章
あとがき

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年6月7日

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