書評

『みしらぬ国戦争』(KADOKAWA)

  • 2025/06/27
みしらぬ国戦争 / 三崎 亜記
みしらぬ国戦争
  • 著者:三崎 亜記
  • 出版社:KADOKAWA
  • 装丁:単行本(280ページ)
  • 発売日:2025-03-17
  • ISBN-10:4041149444
  • ISBN-13:978-4041149447
内容紹介:
国名も位置も分からない未確認隣接国家〈UNC〉の侵略で、「交戦状態」となったこの国。2年間続く戦争に人々は飽き飽きし、数字だけで伝えられる戦況を他人事のように感じていた。海岸の漂着物… もっと読む
国名も位置も分からない未確認隣接国家〈UNC〉の侵略で、「交戦状態」となったこの国。2年間続く戦争に人々は飽き飽きし、数字だけで伝えられる戦況を他人事のように感じていた。海岸の漂着物を確認するという徴集業務に従事するユイも、そんな「日常」を送る1人。ユイの目的はただ1つ、両親の形見に刻まれた謎の文字を解明し、幼い頃失った記憶を取り戻すことだ。その文字の記された漂着物を拾い集める男性、文字と同じ言語の歌を歌う少女らと交流を深めながら、その秘密に迫ろうとするユイだったが――。
みしらぬ敵、みしらぬ文字、みしらぬ歌、みしらぬ戦争。全てが繋がるとき明らかになる、戦争の“真実”とは?
デビュー作『となり町戦争』から21年後の戦争小説。名前も位置も不明な敵国「未確認隣接国家(UNC)」から侵略を受けているこの国。国内は戦時体制となり、国民は互いを監視し合う。「ネット空間を快適に保つための環境保全五原則(通称カホゴ)」によって不謹慎な投稿も封じられている。政府は戦意高揚のため、敵国からの攻撃をでっち上げる「顕戦工作」を行う。国民の間では、理想郷「ミシラヌ」への憧れが高まっていく。

じつはこの戦争は戦場も戦死者もいない架空の戦争だ。政府も戦争ではなく「非平和状態」と言い換える。なぜそんなことをするのか。それは、戦時中だ、非常時だと言えば、国民はおとなしく従うから。

これはばかばかしいファンタジーだろうか。いやいや、リアルな小説だ。「侵略されている」と主張すれば、国民は国家への信頼度を上げ、好戦的になる。ウクライナへの「特別軍事作戦」をおこなうプーチンしかり、ガザでジェノサイドを続けるネタニエフしかり。経済・貿易に置き換えればトランプもしかり。軍事的な脅威や経済的な脅威を煽(あお)ることばは、眉に唾して聞かなければならない。
みしらぬ国戦争 / 三崎 亜記
みしらぬ国戦争
  • 著者:三崎 亜記
  • 出版社:KADOKAWA
  • 装丁:単行本(280ページ)
  • 発売日:2025-03-17
  • ISBN-10:4041149444
  • ISBN-13:978-4041149447
内容紹介:
国名も位置も分からない未確認隣接国家〈UNC〉の侵略で、「交戦状態」となったこの国。2年間続く戦争に人々は飽き飽きし、数字だけで伝えられる戦況を他人事のように感じていた。海岸の漂着物… もっと読む
国名も位置も分からない未確認隣接国家〈UNC〉の侵略で、「交戦状態」となったこの国。2年間続く戦争に人々は飽き飽きし、数字だけで伝えられる戦況を他人事のように感じていた。海岸の漂着物を確認するという徴集業務に従事するユイも、そんな「日常」を送る1人。ユイの目的はただ1つ、両親の形見に刻まれた謎の文字を解明し、幼い頃失った記憶を取り戻すことだ。その文字の記された漂着物を拾い集める男性、文字と同じ言語の歌を歌う少女らと交流を深めながら、その秘密に迫ろうとするユイだったが――。
みしらぬ敵、みしらぬ文字、みしらぬ歌、みしらぬ戦争。全てが繋がるとき明らかになる、戦争の“真実”とは?

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年4月26日

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