書評

『片付けない作家と西の天狗』(河出書房新社)

  • 2026/04/09
片付けない作家と西の天狗 / 笙野 頼子
片付けない作家と西の天狗
  • 著者:笙野 頼子
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(230ページ)
  • 発売日:2004-06-18
  • ISBN-10:4309016405
  • ISBN-13:978-4309016405
内容紹介:
21世紀になっても居場所がなかった作家の終わりなき戦い。伊勢、京都、八王子、高尾、雑司が谷、佐賀、金沢、故郷を出て転々、拾った猫のため、郊外に定住。文学賞五つ、著書三十四冊、ローン… もっと読む
21世紀になっても居場所がなかった作家の終わりなき戦い。伊勢、京都、八王子、高尾、雑司が谷、佐賀、金沢、故郷を出て転々、拾った猫のため、郊外に定住。文学賞五つ、著書三十四冊、ローン長年…超レア作品をふくむ待望の短編集。

胸の上の前世 S倉極楽図書館 素数長歌と空 五十円食堂と黒い翼 箱のような道 猫々妄者と怪 越乃寒梅泥棒 雑司が谷の「通り悪魔」 片付けない作家と西の天狗

自分の生活が安穏に感じる

笙野頼子さんの文章を読むと、自分の暮らしがいかに安穏としているかを思い知らされ、妙に尻が落ち着かない感じになる。笙野さんは戦っている。いつも戦っている。都内のマンションを引き払い、猫四匹を連れて千葉のS倉に引っ越した。沼がある。空には飛行機も飛ぶ。河童もいるらしい。高尾山では、意味不明の「五十円食堂」に入ったりする。

あるいは猫を介して隣人と諍(いさか)いがある。編集者とのやりとりの中で行き違いもある。論争もあった。

そうしたすべてを避けがたく笙野さんは引き受ける。どうして逃げないのか。逃げようがないのだ。逃げずに物を書くことが仕事だから、逃げられない。そして、男性中心のマッチョな文化状況の中で、圧倒的な存在感を示し続けている。

では、身辺雑記風のエッセイなのかと言えば、まったくそうではない。この連作は立派な小説である。たとえば、「妻は時々男になってしまう。じっと床を見ていて三メートルぽんと飛ぶ。普通の妻よりも随分髭が濃い」。こんなラブリィな文章、やっぱり笙野さんでなくちゃ、書けないのである。
片付けない作家と西の天狗 / 笙野 頼子
片付けない作家と西の天狗
  • 著者:笙野 頼子
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(230ページ)
  • 発売日:2004-06-18
  • ISBN-10:4309016405
  • ISBN-13:978-4309016405
内容紹介:
21世紀になっても居場所がなかった作家の終わりなき戦い。伊勢、京都、八王子、高尾、雑司が谷、佐賀、金沢、故郷を出て転々、拾った猫のため、郊外に定住。文学賞五つ、著書三十四冊、ローン… もっと読む
21世紀になっても居場所がなかった作家の終わりなき戦い。伊勢、京都、八王子、高尾、雑司が谷、佐賀、金沢、故郷を出て転々、拾った猫のため、郊外に定住。文学賞五つ、著書三十四冊、ローン長年…超レア作品をふくむ待望の短編集。

胸の上の前世 S倉極楽図書館 素数長歌と空 五十円食堂と黒い翼 箱のような道 猫々妄者と怪 越乃寒梅泥棒 雑司が谷の「通り悪魔」 片付けない作家と西の天狗

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2004年7月22日

ALL REVIEWS 書評講座(オンライン受講) ≫オンラインで参加する
現地満席|オンライン参加OK
「読む」側から、 「書く」側へ。
オンライン参加OK/過去回アーカイブ付。
全12回・途中申込OK。豪華講師陣の書評講座、開催中。
  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
陣野 俊史の書評/解説/選評
ページトップへ