自身の無力さ、世界の美しさ
去年7月に亡くなった中国の詩人、劉暁波の詩集が刊行された(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆年は2018年)。第2詩集にして最後の詩集だ。3つの章に分かれている。天安門事件を想起し、犠牲者への哀悼の意を書き綴った「鎮魂歌(レクイエム)」。獄中から愛する妻へ書き送った哀切極まりない詩の数々。そして表題作にもなっている散文詩「独り大海原に向かって」。3つの章のうち、最初の「鎮魂歌」が圧倒的な分量を占めているが、ここでは、海をモチーフにした最後の散文詩をごくさわりだけ紹介しよう。海辺に立つ。たった独りで。
この詩句から詩人は、自分の無力さ、そして世界の美しさを歌う。
世界が終わる時、海は涸れる。
透明な抒情に満ちた詩に、比類ない才能を読み取る。