書評

『世界のひきこもり 地下茎コスモポリタニズムの出現』(寿郎社)

  • 2021/03/12
世界のひきこもり 地下茎コスモポリタニズムの出現 / ぼそっと池井多
世界のひきこもり 地下茎コスモポリタニズムの出現
  • 著者:ぼそっと池井多
  • 出版社:寿郎社
  • 装丁:単行本(288ページ)
  • 発売日:2020-10-23
  • ISBN-10:4909281290
  • ISBN-13:978-4909281296
内容紹介:
ひきこもり歴35年の著者がネットを通じて知り合った世界13カ国のひきこもり当事者や支援たちにインタヴュー。いじめられた経験の有無や日々の暮らしと収入など、それぞれの「ひきこもり事情」を闇の中から掬い出し、世に知らしめた衝撃的な本です。

閉じた空間で語られる開かれた言葉による連帯

その当人を知らないのに、イメージだけが積み重なっていく状態って危うい。「ひきこもり」も、そのひとつだろう。

35年もの間、ひきこもり生活を続けてきた著者は、自らを分析対象にしてくる専門家を警戒する。彼らは決して「自分と同じ人生や生活の地平に生きている者ではなかった」からだ。

世界各国のひきこもりと交流すべく「世界ひきこもり機構」を創設し、「ふつうの人」はもちろん、「家の中で生活している他の家族たち」さえも知らないネットワークが世界中に広がっていく。国も家族も会社も帰属意識が薄まっていく世の中にあって、ひきこもりという属性は、「素早く対等に通じ合えてしまう」のだ。

世界各国のひきこもりと対話を重ねていく。行政の制度の違いを語り合えば、一日じゅうパソコンの前に座っているので背中が痛いと漏らし、仕事を探す方法をシェアしたかと思えば、抱えていた性的虐待の記憶を語り始める人もいた。閉じた空間に開かれた言葉が投じられることによって、その地下茎はつながりを強固にしていく。

ひきこもりは、とにかく他者から語られる存在である。間接的な語りによって、私たちは直接的に把握した気になる。インタビュアーが「あなたは働きたいですか」と質問すれば、たとえ「働けるけど働かない」と思っていたとしても、「働きたいけど働けない」とお茶を濁すかもしれない。当事者からの言葉を都合よくつなぎ合わせて、「これは社会の問題だ」「政治が悪い」と落とし込んでいく。

言葉を引き出しているのに、その言葉があらかじめ予測されているという矛盾。ひきこもりの当事者たちの連帯が、表層に流れる言葉の危うさを、地下茎からあぶり出している。
世界のひきこもり 地下茎コスモポリタニズムの出現 / ぼそっと池井多
世界のひきこもり 地下茎コスモポリタニズムの出現
  • 著者:ぼそっと池井多
  • 出版社:寿郎社
  • 装丁:単行本(288ページ)
  • 発売日:2020-10-23
  • ISBN-10:4909281290
  • ISBN-13:978-4909281296
内容紹介:
ひきこもり歴35年の著者がネットを通じて知り合った世界13カ国のひきこもり当事者や支援たちにインタヴュー。いじめられた経験の有無や日々の暮らしと収入など、それぞれの「ひきこもり事情」を闇の中から掬い出し、世に知らしめた衝撃的な本です。

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初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2020年11月29日号

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