『女はなぜ突然怒り出すのか?』(角川グループパブリッシング)

なるほどそうだったか！

じっさい、これは私などもしばしば経験することなのだが、私ども男が何気なく言った言葉に、女が異常に反応して（と男には見える）突然に怒り出す、ということがある。そうすると、男どもは、いったい何がいけなかったのかとおろおろとするばかり。一方の女はどうしてこの大切なことが男には分からないの！と、ますます怒り心頭となる。

私にとって、このことは永遠に理解できない女心の謎であった。

ところが、この『女はなぜ突然怒り出すのか？』という、そのものずばりの題名の本を紐解くに及んで、なるほどなるほど、うーむ、そうだったか。と大いに頷かされた。

なんでも男と女とでは脳の構造が違っていて、間脳に存在する前交連という部位（これは感情の通路となっているところだそうである）が女は男よりもずっと太く、それだけ感情豊かで、逆にいうと感情に動かされやすい脳なのだという。

これを書いたのは姫野友美さんという女性で、れっきとした心療内科の医学博士なのだから、書かれていることには充分の説得力もあり、科学的な裏付けももちろんある。

そして、ただこの女が突然怒り出すことの解明だけではなく、そこから進展して男女の本質的な性差を、ホルモンやら脳内物質の分泌やらの側面から諄々と説明してくれるのだ。しかも執筆の態度は非常に公平で、冷静な筆致で書かれているのがいかにも読みやすく説得的である。

かくなる上は、男女とも是非こういう本をよく読んで互いの性の違いを認識し、以て不要の軋轢を避けて調和した暮らしをしたいものである。おそらく、著者の願いもそこにあるものと、私は読んだ。