書評

『いのちの絆 大震災を生きる』(静山社)

  • 2024/10/20
いのちの絆 大震災を生きる / 鈴木 秀子
いのちの絆 大震災を生きる
  • 著者:鈴木 秀子
  • 出版社:静山社
  • 装丁:文庫(224ページ)
  • 発売日:2011-07-05
  • ISBN-10:4863891199
  • ISBN-13:978-4863891197
内容紹介:
未曾有の地震と津波に襲われた東日本大震災、そこに現れたのは「助けあい、支えあう」人間の本質だった。見知らぬ人を助けようとして濁流にのまれた男性、なけなしの灯油を分けてくれた隣人、… もっと読む
未曾有の地震と津波に襲われた東日本大震災、そこに現れたのは「助けあい、支えあう」人間の本質だった。見知らぬ人を助けようとして濁流にのまれた男性、なけなしの灯油を分けてくれた隣人、つらいとき黙ってそばに寄り添ってくれた人、つないだ手を最後まで離さずに流された幼い兄妹…。東日本大震災、原発爆発、阪神大震災を現地取材。すべてを失った極限状態のとき、人を救うのはお金でも物でもなく人である。苦しみのなかから勇気と力を与えてくれる「いのちの絆」。

目次
第1章 癒しの訪れを待ちながら(地震と大津波の爪痕;人は根っこでつながっている ほか)
第2章 見えない恐怖から逃れて(任務を全うした消防団員たち;風評被害に負けない勁さ ほか)
第3章 生きているという奇跡(「故郷」;悟りにも似た確信 ほか)
第4章 助けあいの本能が目覚める(人間の奥深くにある本能;「お互いにできることをするだけよ」 ほか)
第5章 大きな災害が意味のあるものになるとき(日本に漂う閉塞感;新たな自分と向きあう ほか)
こたびの大震災については、さまざまの人がさまざまの本を書いているなかで、鈴木秀子さんの新著『いのちの絆 際震災を生きる』は、ほんとうに好かった(ALLREVIEWS事務局注:本書評執筆年は2011年)。

病気とか死とか、のっぴきならないことに直面した人たちが、どうやってそれと対峙し、応戦し、そしてそこに生きる意味を見出したか、シスターとして、また、心理セラピストとして、多くの現実に親しく接してきた筆者が、このたびの東日本大震災の惨状に対して、しっかりと向き合ったのが、この一冊である。

全五章のうち、一・二章は東日本大震災、三・四章は阪神淡路大震災の現場で接した多くの現実と教訓、そして第五章はその全体のまとめと考察と言ったらいいだろうか。

いずれも机上の空論でなくて、みずから実際に足を運んで現実に直面しての知見を書いているところに、非常な力がある。

震災直後の闇のなかで寒さに震えていた人のところへ、なけなしの灯油を持ってきてくれた隣人の話、迫り来る津波のなかで、父親の位牌を取りに行って逃げ遅れた十歳の少年の話、自らも被災しながら、不眠不休で高速道路の復旧に尽瘁した人の話等々、この本を読んでいると、随所に人間というものは心の美しいものだなあと、ふと感動して涙を禁じ得ぬところが出てくる。

そういうさまざまの苦難や経験のなかから、それを未来につなげていくにはどう考えたらいいか、鈴木さんは、諄々と説かれる。

そこではキリスト教とか仏教とか、そういう枠を超えて、人の心の「善さ・美しさ」が胸に迫ってくるのである。読後感の爽やかな好著、週末の読書に最適の一冊である。
いのちの絆 大震災を生きる / 鈴木 秀子
いのちの絆 大震災を生きる
  • 著者:鈴木 秀子
  • 出版社:静山社
  • 装丁:文庫(224ページ)
  • 発売日:2011-07-05
  • ISBN-10:4863891199
  • ISBN-13:978-4863891197
内容紹介:
未曾有の地震と津波に襲われた東日本大震災、そこに現れたのは「助けあい、支えあう」人間の本質だった。見知らぬ人を助けようとして濁流にのまれた男性、なけなしの灯油を分けてくれた隣人、… もっと読む
未曾有の地震と津波に襲われた東日本大震災、そこに現れたのは「助けあい、支えあう」人間の本質だった。見知らぬ人を助けようとして濁流にのまれた男性、なけなしの灯油を分けてくれた隣人、つらいとき黙ってそばに寄り添ってくれた人、つないだ手を最後まで離さずに流された幼い兄妹…。東日本大震災、原発爆発、阪神大震災を現地取材。すべてを失った極限状態のとき、人を救うのはお金でも物でもなく人である。苦しみのなかから勇気と力を与えてくれる「いのちの絆」。

目次
第1章 癒しの訪れを待ちながら(地震と大津波の爪痕;人は根っこでつながっている ほか)
第2章 見えない恐怖から逃れて(任務を全うした消防団員たち;風評被害に負けない勁さ ほか)
第3章 生きているという奇跡(「故郷」;悟りにも似た確信 ほか)
第4章 助けあいの本能が目覚める(人間の奥深くにある本能;「お互いにできることをするだけよ」 ほか)
第5章 大きな災害が意味のあるものになるとき(日本に漂う閉塞感;新たな自分と向きあう ほか)

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初出メディア

スミセイベストブック

スミセイベストブック 2011年12月号

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