東京成城の高級老人ホームは入居一次金が最高四・七億円で、入居後も二人で毎月六○万円払うという。
金融資産五億円以上の超富裕層は日本で九万世帯。そんな層向け超高級老人ホームが続々開業している。庶民には手の届かないその実態を、地道に取材したドキュメントだ。
どこが高級か。内装が豪華。一流ホテルの料理が三食で余暇の活動も充実。介護つきで医療スタッフが常駐。至れり尽くせりの≪熱帯魚の水槽≫みたいな理想の空間である。
悪質な施設も中にはある。外見だけ豪華で裏は手抜き。ワンマン経営で常に職員不足。料理も雑。入居前に評判をよく調べたほうがよい。
入居者同士のトラブルなど老人ホームあるあるも多い。適度な距離感でつきあいなさい、がヒントだ。
何が「高級」なのか。ある入居者は言う、≪友達ができる環境が揃っている≫ことだな。業界人は言う、≪客を錯覚させるための巧みな演出があるかどうか≫だろ。それに大金を払うのか。引退し年老い、心細いセレブが≪居場所を見つけるための場≫なのかも。拡がる格差を見せつけられるような微妙な読後感が残る、でも無視できない一冊である。