書評

『非常識なやさしさをまとう―人とともにデザインし、障がいを超える―』(ライフサイエンス出版)

  • 2024/10/21
非常識なやさしさをまとう―人とともにデザインし、障がいを超える― / 田中 美咲
非常識なやさしさをまとう―人とともにデザインし、障がいを超える―
  • 著者:田中 美咲
  • 出版社:ライフサイエンス出版
  • 装丁:単行本(240ページ)
  • 発売日:2024-07-10
  • ISBN-10:4897754828
  • ISBN-13:978-4897754826
内容紹介:
医療従事者・課題当事者とともに、1600以上のパターンから選べる障がいやルッキズム、セクシュアリティなど多様性に対応した服を開発コンプレックスや生き苦しさを原動力に、逆境をアイデアに… もっと読む
医療従事者・課題当事者とともに、1600以上のパターンから選べる障がいやルッキズム、セクシュアリティなど多様性に対応した服を開発
コンプレックスや生き苦しさを原動力に、逆境をアイデアに変えた!
設立2年目にして世界の数々のデザインアワードを受賞したファッションブランドSOLIT創業者である女性社会起業家による初の書籍!
多様な人も動植物も地球環境もどれも取り残さない
D&Iを推進する日本の大企業に伴走する
SOLITの理念やプロダクトに流れるのは「非常識なやさしさ」だった

・デザイン未経験で立ち上げたファッションブランド
・デザインの責任を自覚し、誰も傷つかないプロダクトを生み出す
・株主の議決権を制約し、資本の意味を問い直す「やさしい株式」
・断らないを前提とする採用、社員・プロボノ・ボランティアなど多様な関わり方で強みと弱みを活かし合うチームをつくる

設立2年目にして医療従事者・課題当事者とともに多様性に対応した服を開発し、数々の世界のデザインアワードを受賞したファッションブランドSOLIT!。
本書はSOLITを創業し、数々の社会課題に取り組んできた著者が、居場所がなかった学生時代、初めて起業した会社の内部分裂や軌道に乗った矢先の解散を経て、デザイン未経験ながら世界を席巻する多様性に対応したファッションブランドを立ち上げるまでの軌跡を語る。
また、本書ではD&Iを推進する日本の有名企業に伴走支援するSOLITのD&Iやサステナビリティの考え方、世界で評価されるインクルーシブデザインの手法、多様な人を包括し、弱みを強みに変えるチームのつくり方も紹介する。さらに、日本を代表する社会起業家、課題当事者の特別寄稿と対談を収載。著者のコンプレックスや生き苦しさを感じていた半生から紡ぎ出されたSOLITの理念やプロダクトに秘められた「非常識なやさしさ」に迫る。

プロローグ
第1章 自分の居場所がない
 いじめ、いじめられることが当たり前の小学校
 心を閉じ、無になる
 誰もわたしのことを知らないところへ行きたい
 諸刃の剣
 まじめな世界一周
 焦燥感と無力感
 周囲と折り合えない
 答えのない選択肢の中で
 それでも前に進まなければならない
寄稿01 困る人が生まれない社会をデザインする(植原正太郎)
第2章 初めての起業は防災がテーマ
 防災を文化に
 山ガール、森ガール、防災ガール
 ライフステージに合わせて仕事をつくる
 誰かがやらなければならなかったことにチャレンジする
 先輩NPOに学んだマネジメント
 炎上のラリー
 チームをゼロから見直す
 チームからコミュニティへ
 企業や自治体との協働
 地方に拠点を移し、生きる知恵をつむぐ
 女性社会起業家世界一に
対談01 気持ちよい伴走(中西須瑞化)
第3章 言葉にならない想いを形にする
 有機的解散と発展的承継
 課題を面でとらえ、立体的に解決する
 一言で表現できない感情を大切にする
 30代からの学び直し
 ファッションに対する特別な想いに気づく
 運命のミーティング
 医療福祉従事者を巻き込む
 「SOLIT!」という幕開け
 資金調達の苦しみ
寄稿02 小さいからこそ偉大である(澤田智洋)
第4章 非常識なやさしさをまとう
 病院との協働でQOLを向上させる
 病衣の概念を変える
 店舗を持たずに全国に届ける
 有償の試着という提案
 障がい者を使ってビジネスするな
 服が場をフラットにする
 世界を席巻するデザイン
 安心・平和を身にまとう
 機能性と日常使いの融合
 つくる人と使う人が対等なプロダクト
 異業種にリソースを共有する
 やるかやらないかではなく、やらなければならない
寄稿03 僕の道標(佐藤かつあき)
第5章 自分たちの哲学で会社を再定義する
 自分たちが信じる未来をつくりたい
 多様な仲間が集まる共同体
 資本の概念を問い直す「やさしい株式」
 わたしたちが目指すサスティナビリティ
 NO MORE WASTE──不必要なものを生み出さない──
 LONG-LIFE PRODUCT──商品寿命の長期化──
 RECYCLING・REPURPOSING──リサイクルと再価値化──
 HUMAN RIGHTS──人権保護──
 BEYOND RULES──既存のルールのとらえ直し──
 もっと多様な存在を包括したい
対談02 女性らしい事業スタイルを創造する(秋本可愛)
第6章 人のためだけでなく、人とともにデザインする
 デザインを人を豊かにするツールに
 デザインの政治性
 SOLITのインクルーシブデザイン
  1. 対象者の拡大/マーケティング──可視化されにくいシーズを見つける──
  2. LTV(顧客生涯価値)の向上──本当に愛されるものをつくり、リピーターを増やす──
  3. 価値創造・イノベーション創出──多様な存在と意見を受け入れ、組織の同一性を回避する──
  4. 信頼性・コーポレートイメージの向上──顧客に信頼と安心をもたらす──
  5. 存在論的デザイン
 デザインの責任──プロダクトは一人歩きする──
  1. 歴史や文化、蓄積された価値観の地続きの中にいることを理解する
  2. アウトプットが手を離れて知らない人に伝わっていくことを想像する
  3. 自分の中に倫理観を持ち、伝える技術を養う
  4. 多様な視点を持つ人と接する
寄稿04 SOLITの存在とデザインの重要性とその価値について(ウーヴェ・クレメリング)
第7章 多様性を前提にチームをつくる
 ダイバーシティ&インクルージョン後進国日本
 主語の大きさが多様性を妨げる
 断らないを前提とする採用
 関わり方の多様性
 強みと弱みを共有する
 目の前の「あなた」と活動するためのルール
 組織の終わり方
対談: 障がいをポップにデザインする(石井健介)
第8章 障がいを超える
 わたしも「障がい者」になった
 障がいは障がいではなくなる
 すべての概念はグラデーション
 それでも対話を繰り返すこと
 経営と自己責任のあいだ
 当事者がカミングアウトするその先へ
あとがき
あとがきのあとがき
≪お前は人一倍パワーがあり過ぎる。…人生で何を成し遂げたい≫。コーチングの授業でこう問われ雲が晴れた。≪傲慢で、…負けず嫌い≫な著者は、小中高で居場所がなかった。東日本大震災では現地に飛び込み働いた。やがて「防災ガール」を起業。7年して事業を譲渡した後、社会課題解決の新会社と衣料ブランド「SOLIT!」を創業した。

車椅子などハンディがあっても誰でもファッションを楽しもうよ。病院やデザイナーも知恵を出しあって数多くのパターンから受注生産するシステムを作った。ベルリンの著名なデザイン賞最高賞にも輝いた。

苦労ばかりだ。「防災ガール」は社内の不満で炎上し、新会社でもストレスで≪双極性障害と、パニック障害を発症≫した。それで障害者「福祉手帳」を取得。そんな舞台裏も赤裸々に語る本書は、爽やかに勇気を送ってくれる。誰ひとり取り残さない「インクルージョン」をめざす会社の、理念そのままの体当たり経営だ。多様性を掲げる企業は腰砕けにならぬよう、起業家・田中美咲氏の渾身の半生記を読みなさい。
非常識なやさしさをまとう―人とともにデザインし、障がいを超える― / 田中 美咲
非常識なやさしさをまとう―人とともにデザインし、障がいを超える―
  • 著者:田中 美咲
  • 出版社:ライフサイエンス出版
  • 装丁:単行本(240ページ)
  • 発売日:2024-07-10
  • ISBN-10:4897754828
  • ISBN-13:978-4897754826
内容紹介:
医療従事者・課題当事者とともに、1600以上のパターンから選べる障がいやルッキズム、セクシュアリティなど多様性に対応した服を開発コンプレックスや生き苦しさを原動力に、逆境をアイデアに… もっと読む
医療従事者・課題当事者とともに、1600以上のパターンから選べる障がいやルッキズム、セクシュアリティなど多様性に対応した服を開発
コンプレックスや生き苦しさを原動力に、逆境をアイデアに変えた!
設立2年目にして世界の数々のデザインアワードを受賞したファッションブランドSOLIT創業者である女性社会起業家による初の書籍!
多様な人も動植物も地球環境もどれも取り残さない
D&Iを推進する日本の大企業に伴走する
SOLITの理念やプロダクトに流れるのは「非常識なやさしさ」だった

・デザイン未経験で立ち上げたファッションブランド
・デザインの責任を自覚し、誰も傷つかないプロダクトを生み出す
・株主の議決権を制約し、資本の意味を問い直す「やさしい株式」
・断らないを前提とする採用、社員・プロボノ・ボランティアなど多様な関わり方で強みと弱みを活かし合うチームをつくる

設立2年目にして医療従事者・課題当事者とともに多様性に対応した服を開発し、数々の世界のデザインアワードを受賞したファッションブランドSOLIT!。
本書はSOLITを創業し、数々の社会課題に取り組んできた著者が、居場所がなかった学生時代、初めて起業した会社の内部分裂や軌道に乗った矢先の解散を経て、デザイン未経験ながら世界を席巻する多様性に対応したファッションブランドを立ち上げるまでの軌跡を語る。
また、本書ではD&Iを推進する日本の有名企業に伴走支援するSOLITのD&Iやサステナビリティの考え方、世界で評価されるインクルーシブデザインの手法、多様な人を包括し、弱みを強みに変えるチームのつくり方も紹介する。さらに、日本を代表する社会起業家、課題当事者の特別寄稿と対談を収載。著者のコンプレックスや生き苦しさを感じていた半生から紡ぎ出されたSOLITの理念やプロダクトに秘められた「非常識なやさしさ」に迫る。

プロローグ
第1章 自分の居場所がない
 いじめ、いじめられることが当たり前の小学校
 心を閉じ、無になる
 誰もわたしのことを知らないところへ行きたい
 諸刃の剣
 まじめな世界一周
 焦燥感と無力感
 周囲と折り合えない
 答えのない選択肢の中で
 それでも前に進まなければならない
寄稿01 困る人が生まれない社会をデザインする(植原正太郎)
第2章 初めての起業は防災がテーマ
 防災を文化に
 山ガール、森ガール、防災ガール
 ライフステージに合わせて仕事をつくる
 誰かがやらなければならなかったことにチャレンジする
 先輩NPOに学んだマネジメント
 炎上のラリー
 チームをゼロから見直す
 チームからコミュニティへ
 企業や自治体との協働
 地方に拠点を移し、生きる知恵をつむぐ
 女性社会起業家世界一に
対談01 気持ちよい伴走(中西須瑞化)
第3章 言葉にならない想いを形にする
 有機的解散と発展的承継
 課題を面でとらえ、立体的に解決する
 一言で表現できない感情を大切にする
 30代からの学び直し
 ファッションに対する特別な想いに気づく
 運命のミーティング
 医療福祉従事者を巻き込む
 「SOLIT!」という幕開け
 資金調達の苦しみ
寄稿02 小さいからこそ偉大である(澤田智洋)
第4章 非常識なやさしさをまとう
 病院との協働でQOLを向上させる
 病衣の概念を変える
 店舗を持たずに全国に届ける
 有償の試着という提案
 障がい者を使ってビジネスするな
 服が場をフラットにする
 世界を席巻するデザイン
 安心・平和を身にまとう
 機能性と日常使いの融合
 つくる人と使う人が対等なプロダクト
 異業種にリソースを共有する
 やるかやらないかではなく、やらなければならない
寄稿03 僕の道標(佐藤かつあき)
第5章 自分たちの哲学で会社を再定義する
 自分たちが信じる未来をつくりたい
 多様な仲間が集まる共同体
 資本の概念を問い直す「やさしい株式」
 わたしたちが目指すサスティナビリティ
 NO MORE WASTE──不必要なものを生み出さない──
 LONG-LIFE PRODUCT──商品寿命の長期化──
 RECYCLING・REPURPOSING──リサイクルと再価値化──
 HUMAN RIGHTS──人権保護──
 BEYOND RULES──既存のルールのとらえ直し──
 もっと多様な存在を包括したい
対談02 女性らしい事業スタイルを創造する(秋本可愛)
第6章 人のためだけでなく、人とともにデザインする
 デザインを人を豊かにするツールに
 デザインの政治性
 SOLITのインクルーシブデザイン
  1. 対象者の拡大/マーケティング──可視化されにくいシーズを見つける──
  2. LTV(顧客生涯価値)の向上──本当に愛されるものをつくり、リピーターを増やす──
  3. 価値創造・イノベーション創出──多様な存在と意見を受け入れ、組織の同一性を回避する──
  4. 信頼性・コーポレートイメージの向上──顧客に信頼と安心をもたらす──
  5. 存在論的デザイン
 デザインの責任──プロダクトは一人歩きする──
  1. 歴史や文化、蓄積された価値観の地続きの中にいることを理解する
  2. アウトプットが手を離れて知らない人に伝わっていくことを想像する
  3. 自分の中に倫理観を持ち、伝える技術を養う
  4. 多様な視点を持つ人と接する
寄稿04 SOLITの存在とデザインの重要性とその価値について(ウーヴェ・クレメリング)
第7章 多様性を前提にチームをつくる
 ダイバーシティ&インクルージョン後進国日本
 主語の大きさが多様性を妨げる
 断らないを前提とする採用
 関わり方の多様性
 強みと弱みを共有する
 目の前の「あなた」と活動するためのルール
 組織の終わり方
対談: 障がいをポップにデザインする(石井健介)
第8章 障がいを超える
 わたしも「障がい者」になった
 障がいは障がいではなくなる
 すべての概念はグラデーション
 それでも対話を繰り返すこと
 経営と自己責任のあいだ
 当事者がカミングアウトするその先へ
あとがき
あとがきのあとがき

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2024年8月3日

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