前書き

『トヨタの話し合い 最強の現場をつくった聞き方・伝え方のルール』(ダイヤモンド社)

  • 2019/01/17
トヨタの話し合い 最強の現場をつくった聞き方・伝え方のルール / 加藤 裕治
トヨタの話し合い 最強の現場をつくった聞き方・伝え方のルール
  • 著者:加藤 裕治
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(256ページ)
  • 発売日:2019-01-17
  • ISBN:4478106037
内容紹介:
トヨタの強さの秘密は「徹底した話し合い」にある。上下関係もなく本質を議論できる企業は どのように運営されているのか?
『トヨタの話し合い 最強の現場をつくった聞き方・伝え方のルール』の著者・加藤裕治さんは、トヨタ労組の書記長、自動車総連の会長、金属労協の議長などの要職を長年務めた日本労働界の重鎮。今回ALL REVIEWSでは、同書より「はじめに」を特別公開致します。

はじめに

「トヨタに学べ!」
「カイゼン、トヨタ生産方式だ」

バブルが崩壊し、日本経済が停滞した頃、その中でも着実に日本一の利益を上げ、世界一に向かって邁進するトヨタを見倣らって、トヨタ生産方式(TPS)を取り入れようとする企業が次々と現れた。トヨタ生産方式に関する本もたくさん出版された。

しかし、それによって企業の業績が反転向上した成功談は必ずしも多くない。なぜか。

それは、TPSが企業業績を改善する特効薬ではなく(たぶん漢方薬のようなものだろう)、また、ジャスト・イン・タイムやカンバン方式を真似ても、それだけでTPSが実践できるわけではないからである。

TPSによる経営を成功に導くには、社員一人ひとりの価値観にまで踏み込んで「カイゼン」という魂を入れなければ、まさに「仏つくって魂を入れず」になってしまう。そして、それを飽くことなく無限に実践しなければ、企業業績の向上に結びつくことはない。


トヨタでは、このTPSの魂の部分を社員に浸透させるために、労働組合が大きな役割を果たしてきたと私は考えている。カイゼンを本物にするには「徹底して考える」、そして「徹底して話し合う」ことが必須である。

トヨタ労組では、組合員一人ひとりが「徹底して考えること」と「徹底して話し合うこと」を活動の基本に置き、繰り返し実践してきた。それが、労働条件を長期安定的に向上させる最も有効な道だったからである。トヨタの社員は組合員として組合活動に関わることで、カイゼンという方法論により深く馴染んでいくのである。

世にTPSを解説した書物は多いが、「カイゼンを実践できる人はどんな考えで行動できる人なのか」「どこが普通のサラリーマンと違うのか」というような、個々の人間レベルまで掘り下げて解説した本はあまり見かけない。トヨタの労使関係の深淵に踏み込んで見てみると、実は、その部分が見えてくるのだ。

そこで私は、TPSの中核をなすカイゼンの本質をできるだけ多くの人に理解してもらうため、トヨタの労使関係のエッセンスともいえる「話し合い」をテーマとして、自分のナマの経験を披露してみようと考えた。それが、会社生活の大部分を労組役員として勤めた人間の使命ではないかと思ったからである。


ところで、この本を書き進めている時期に、企業不祥事が多発し世間を騒がせた。私に言わせれば、カイゼンが真に社員に根づけば、企業不祥事など起こるはずはない。なぜなら、「カイゼン」とは、「悪さ、問題点の洗い出し、見える化」が第一歩だからである。悪さを隠す人間をゼロにすれば、不祥事は根っこで防げるはずだ。

トヨタ労使が愚直に追い求めてきたカイゼン定着への道のりを知ってもらうことは、企業不祥事の防止につながる道でもあると私は思う。


もう一つ、この本で言いたい大切なことがある。カイゼンを実践する社員は、自ずと仕事に対するモチベーションが高まるということである。TPSは、製造部門との親和性が高いが、他のどんな業種でも、カイゼンの実践によって社員のモチベーションを上げることは可能である。社員の士気が高くなれば、業績向上に資することも間違いない。

欲張るようであるが、さらにもう1点付け加えると、カイゼンを実践することは個々人の生き方を前向きにする。前向きな生き方はその人の人生を豊かにする。この本でトヨタ成長の秘密を読み取り、人生をも豊かにしていただければ、こんなに嬉しいことはない。
トヨタの話し合い 最強の現場をつくった聞き方・伝え方のルール / 加藤 裕治
トヨタの話し合い 最強の現場をつくった聞き方・伝え方のルール
  • 著者:加藤 裕治
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(256ページ)
  • 発売日:2019-01-17
  • ISBN:4478106037
内容紹介:
トヨタの強さの秘密は「徹底した話し合い」にある。上下関係もなく本質を議論できる企業は どのように運営されているのか?

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