書評

『揺れる輪郭』(早川書房)

  • 2025/07/27
揺れる輪郭 / グレアム・マクレー・バーネット
揺れる輪郭
  • 著者:グレアム・マクレー・バーネット
  • 翻訳:宇佐川 晶子
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(360ページ)
  • 発売日:2025-05-22
  • ISBN-10:4152104295
  • ISBN-13:978-4152104298
内容紹介:
精神科医ブライスウェイトの伝記執筆のため、資料を集めていた著者の元に、ある若い女性のノートが届く―ブライスウェイトの元を訪れた“患者”が書いたものだ。彼女は身元を隠し、「レベッカ・ス… もっと読む
精神科医ブライスウェイトの伝記執筆のため、資料を集めていた著者の元に、ある若い女性のノートが届く―ブライスウェイトの元を訪れた“患者”が書いたものだ。彼女は身元を隠し、「レベッカ・スミス」という偽名で診察を受けはじめる。自分の姉の自殺には、通っていた精神科が関係しているのではと疑い、その真相に迫るためだ。ノートの中で彼女が語るのは、家族の記憶、自分の欲望、そして姉の最期にまつわる物語。だが、読み進めるほどに、その語りには小さなズレが忍び込みはじめる。これは本心なのか、演技なのか。それとも―。読者の足元も揺るがす、不穏で緻密な語りの迷宮。ブッカー賞候補作。
現代文学において伝記や手記を取り入れた小説になんらメタフィクショナルな仕掛けがないはずがない。本書の作者らしき「私」はGMBと名乗っており、オーサー・サロゲート(著者代理)とも考えられる。

GMBは昔のサイコセラピスト、ブライスウェイト博士に興味をもち、研究を進めている。そこに舞い込んだのが、博士に治療を受けたという匿名女性の記録ノートだった。

女性は博士の患者だった姉の自殺の原因には彼の治療法があるのではと考え、「レベッカ・スミス」という偽名でセッションに潜入する。ところが、このレベッカ(デュ・モーリアの小説の実体のない人物から名を取っている)という別人格が独り歩きをし始めてしまう。

彼女のノートと交互に現れるのが、GMBによるブライスウェイトの伝記だ。彼は「Kill Yourself(自己を殺せ)」なる著書を書いて売れっ子になるのだが……。

近年ではオランダ作家ペーター・テリンの変幻自伝小説『身内のよんどころない事情により』などにも比肩するフィクションの迷宮である。
揺れる輪郭 / グレアム・マクレー・バーネット
揺れる輪郭
  • 著者:グレアム・マクレー・バーネット
  • 翻訳:宇佐川 晶子
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:単行本(360ページ)
  • 発売日:2025-05-22
  • ISBN-10:4152104295
  • ISBN-13:978-4152104298
内容紹介:
精神科医ブライスウェイトの伝記執筆のため、資料を集めていた著者の元に、ある若い女性のノートが届く―ブライスウェイトの元を訪れた“患者”が書いたものだ。彼女は身元を隠し、「レベッカ・ス… もっと読む
精神科医ブライスウェイトの伝記執筆のため、資料を集めていた著者の元に、ある若い女性のノートが届く―ブライスウェイトの元を訪れた“患者”が書いたものだ。彼女は身元を隠し、「レベッカ・スミス」という偽名で診察を受けはじめる。自分の姉の自殺には、通っていた精神科が関係しているのではと疑い、その真相に迫るためだ。ノートの中で彼女が語るのは、家族の記憶、自分の欲望、そして姉の最期にまつわる物語。だが、読み進めるほどに、その語りには小さなズレが忍び込みはじめる。これは本心なのか、演技なのか。それとも―。読者の足元も揺るがす、不穏で緻密な語りの迷宮。ブッカー賞候補作。

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年6月21日

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